翌年も休みなく1月の京都牝馬特別(GⅢ、京都・芝1600m)から始動。単勝オッズ1.4倍の圧倒的1番人気に推されると、ここでも2番手から上がり1位(36秒0)の強烈な差し脚で突き抜けると、ゴールでは2着に6馬身差をつけて圧勝。続くマイラーズカップ(GⅡ、中京・芝1700m)は接戦となったが、のちにジャパンカップ(GⅠ)を制するマーベラスクラウンをクビ差で降して、鞍上に起用された武豊の手綱で3連勝を飾った。
次走は主戦の角田晃一に手綱が戻り、春の最大目標である安田記念(GⅠ、東京・芝1600m)。この年は、ステップレースの京王杯スプリングカップ(GⅡ、東京・芝1400m)を制したフランスのスキーパラダイス、G1レース2勝の実績を持つ英国のサイエダティなど海外の強豪5頭が参戦し、地元のサクラバクシンオーをも敵に回したため、ノースフライトの単勝は5番人気にとどまった。しかしレースでは、彼女が過去最高のパフォーマンスを満場の観客に披露する。
1000mの通過ラップが56秒9という超ハイペースで流れるなか、最終コーナーから先頭に立ったサクラバクシンオーは直線へ向いても粘りに粘る。しかし10番手から鋭い差し脚を繰り出したノースフライトが直線半ばでサクラバクシンオーを捉えて先頭に躍り出ると、追い込むトーワダーリン、フランスのドルフィンストリートを楽々と抑え、後続に2馬身半差という決定的な差を付けて念願のGⅠタイトルを手に入れた。デビューからわずか1年、キャリア9戦目での戴冠だった。
実り多かった春シーズンを終えたノースフライトは5か月あまりを休養に充てて、10月末のスワンステークス(GⅡ、阪神・芝1400m)。ここは「1200から1400は日本一速い」と評されたサクラバクシンオーが2番手から抜け出し、5番手から追ったノースフライトを1馬身1/4差抑えて勝利。安田記念のリベンジを果たした。
しかし1600mの舞台となれば話は別だ。レース前に陣営から「これが引退レースになる」と発表されたマイルチャンピオンシップ(GⅠ、京都・芝1600m)で、ノースフライトはまたも強烈なレースを見せる。
好スタートを切ったサクラバクシンオーが抑え気味に2~3番手に付けると、ノースフライトはそれを目前に見る5~6番手を進む。平均的な流れのなか、最終コーナーを回ったサクラバクシンオーは先頭に立つも、ぎりぎりまで追い出しを我慢して末脚を温存しようとする。しかし直後まで迫っていたノースフライトはあっさりと馬体を併せ、抵抗するサクラバクシンオーをねじ伏せるように力強いフットワークを繰り出して先頭に躍り出ると、1馬身半差を付けて圧勝。春秋のマイルGⅠを制して、このカテゴリーで文句なしのチャンピオンとなった。
牧場の宝となったノースフライトはファンに惜しまれながら生まれ故郷の大北牧場へと帰った。彼女が産んだ3番仔のミスキャスト(父サンデーサイレンス)は重賞未勝利ながら種牡馬入りし、決して多くはない産駒のなかから2012年の春の天皇賞(GⅠ)を制したビートブラックを出した。
社台ファームの血を受けながら、種牡馬トニービンの名を大いに高めたマイルの女王は2011年をもって繁殖生活から引退。功労馬として過ごしていた大北牧場で天寿をまっとうし、2012年1月に永眠した。
突如としてファンの目の前に現れ、あっという間に頂点に立つと、風のようにターフを去ってしまった。その鮮やかな生きざま、走りざまはいまも鋭く脳裏に刻まれている。
文●三好達彦
【記事】【名馬列伝】大種牡馬サンデーサイレンス「最初の大物」バブルガムフェロー 3歳馬にも門戸解放された天皇賞で完遂した革新的“GⅠ挑戦ローテ“
【記事】【名馬列伝】“マルゼンスキー超え”を果たしたリンドシェーバー 「マル外ブーム」の着火剤となった90年代の超快速馬
次走は主戦の角田晃一に手綱が戻り、春の最大目標である安田記念(GⅠ、東京・芝1600m)。この年は、ステップレースの京王杯スプリングカップ(GⅡ、東京・芝1400m)を制したフランスのスキーパラダイス、G1レース2勝の実績を持つ英国のサイエダティなど海外の強豪5頭が参戦し、地元のサクラバクシンオーをも敵に回したため、ノースフライトの単勝は5番人気にとどまった。しかしレースでは、彼女が過去最高のパフォーマンスを満場の観客に披露する。
1000mの通過ラップが56秒9という超ハイペースで流れるなか、最終コーナーから先頭に立ったサクラバクシンオーは直線へ向いても粘りに粘る。しかし10番手から鋭い差し脚を繰り出したノースフライトが直線半ばでサクラバクシンオーを捉えて先頭に躍り出ると、追い込むトーワダーリン、フランスのドルフィンストリートを楽々と抑え、後続に2馬身半差という決定的な差を付けて念願のGⅠタイトルを手に入れた。デビューからわずか1年、キャリア9戦目での戴冠だった。
実り多かった春シーズンを終えたノースフライトは5か月あまりを休養に充てて、10月末のスワンステークス(GⅡ、阪神・芝1400m)。ここは「1200から1400は日本一速い」と評されたサクラバクシンオーが2番手から抜け出し、5番手から追ったノースフライトを1馬身1/4差抑えて勝利。安田記念のリベンジを果たした。
しかし1600mの舞台となれば話は別だ。レース前に陣営から「これが引退レースになる」と発表されたマイルチャンピオンシップ(GⅠ、京都・芝1600m)で、ノースフライトはまたも強烈なレースを見せる。
好スタートを切ったサクラバクシンオーが抑え気味に2~3番手に付けると、ノースフライトはそれを目前に見る5~6番手を進む。平均的な流れのなか、最終コーナーを回ったサクラバクシンオーは先頭に立つも、ぎりぎりまで追い出しを我慢して末脚を温存しようとする。しかし直後まで迫っていたノースフライトはあっさりと馬体を併せ、抵抗するサクラバクシンオーをねじ伏せるように力強いフットワークを繰り出して先頭に躍り出ると、1馬身半差を付けて圧勝。春秋のマイルGⅠを制して、このカテゴリーで文句なしのチャンピオンとなった。
牧場の宝となったノースフライトはファンに惜しまれながら生まれ故郷の大北牧場へと帰った。彼女が産んだ3番仔のミスキャスト(父サンデーサイレンス)は重賞未勝利ながら種牡馬入りし、決して多くはない産駒のなかから2012年の春の天皇賞(GⅠ)を制したビートブラックを出した。
社台ファームの血を受けながら、種牡馬トニービンの名を大いに高めたマイルの女王は2011年をもって繁殖生活から引退。功労馬として過ごしていた大北牧場で天寿をまっとうし、2012年1月に永眠した。
突如としてファンの目の前に現れ、あっという間に頂点に立つと、風のようにターフを去ってしまった。その鮮やかな生きざま、走りざまはいまも鋭く脳裏に刻まれている。
文●三好達彦
【記事】【名馬列伝】大種牡馬サンデーサイレンス「最初の大物」バブルガムフェロー 3歳馬にも門戸解放された天皇賞で完遂した革新的“GⅠ挑戦ローテ“
【記事】【名馬列伝】“マルゼンスキー超え”を果たしたリンドシェーバー 「マル外ブーム」の着火剤となった90年代の超快速馬
関連記事
- 【名馬列伝】大種牡馬サンデーサイレンス「最初の大物」バブルガムフェロー 3歳馬にも門戸解放された天皇賞で完遂した革新的“GⅠ挑戦ローテ“
- 【名馬列伝】“天才を天才にした”スーパークリーク。オグリキャップ、イナリワンと「平成三強」を形成した稀代の名ステイヤー
- 【名馬列伝】“マルゼンスキー超え”を果たしたリンドシェーバー 「マル外ブーム」の着火剤となった90年代の超快速馬
- 【名馬列伝】「和製ラムタラ」と称された“奇跡の馬“フサイチコンコルド。名伯楽が己の流儀を曲げ、生涯一度きりの大舞台で起こした53年ぶりの快挙
- 【名馬列伝】日本馬初の「単独世界一」に格付けされたジャスタウェイ。父に続き驚くべき“覚醒”を遂げた軌跡