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格闘技・プロレス

コロナ問題で井上尚弥のベガスデビュー戦に暗雲…現地記者が明かす米ボクシング界の現状と展望

杉浦大介

2020.03.15

 この日、同社のボブ・アラム・プロモーターが井上の試合を無観客興行にする可能性について米メディア相手に言及した。無観客での試合を本当に実施するなら、ラスベガスにある広大なトップランクの本拠地ジムを装飾するのか。あるいはより多くの関係者を収容できるUFCのエイペックス(最大約2000人収容のイベント施設)も、開催地の有力候補になるのだろう。

 井上対カシメロの入場料は安価に設定されており、もともとゲート収入(チケット売り上げ)に頼った興行ではない。アメリカ国民の外出機会が制限された状況では、より多くのテレビ視聴者が望め、今戦と直前イベントを配信するESPN+(動画配信サービス)も新規加入者が期待できるという現実もある。そんな背景を考えれば、トップランクが次期目玉候補と考えている井上の試合はぜひとも開催しておきたいはずだ。コンテンツを確保したいESPNの思惑もあり、開催に向けて最大限の努力はなされるに違いない。
 
 しかし――。アメリカ国内の状況は刻一刻と変化しており、そんな当事者の思惑は軽々と吹き飛ばされる可能性も十分ある。

 ラスベガスからも徐々にコロナウィルス感染者増加の報道と噂が届いており、すでに数々のイベントがキャンセルされた。そういった状況を見て、14日にはネバダ州アスレチック・コミッションが3月25日まで格闘技イベントのライセンスを無効にするという報道がなされている。この状態では、ラスベガスでのボクシング興行ももちろん不可能ということになる。

 次の公聴会は25日の予定とのことだが、ライセンス停止が延長されてももう誰も驚かないだろう。The Athleticはすでに「無期限停止」と伝えている。

 厳しい逆風の中で、トップランクはどんな決断を下すか。井上のように海外から来る選手は早めに入国しておかなければいけないという事情もあるだけに、止むを得ず早い段階で延期を発表することも考えられそうだ。

 とにかく状況は目まぐるしく動いており、現状では楽観的になるのは難しいのが事実ではある。アメリカにスポーツの喜びが戻ってくるのはいつになるのか。悪夢は去り、日本のモンスターも無事に新大陸に辿り着けるのか。今は世界を覆っている黒雲が一刻も早く晴れ、私たちが“普段通り”を享受する日が再び訪れることを願うばかりである。

取材・文●杉浦大介

【著者プロフィール】
すぎうら・だいすけ/ニューヨーク在住のスポーツライター。MLB、NBA、ボクシングを中心に取材・執筆活動を行う。ツイッターIDは@daisukesugiura。

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