東京五輪では、世界の一流の選手とタフな戦いが続く。全日本選手権以上に張り詰めた緊張感の中で集中し、全力を出して戦うのでより疲れを感じることになるだろう。張本は前陣で、驚異的な素早い反応とスピードで打ち返し、相手に隙をまったく与えない。大きく脚を開き、体を大きくひねって打つボールは、スピードと変化を持っている。しかし、疲労が重なってくると前陣で素早く状況を判断し、威力のある返しをするのが難しくなっていく。そのため、試合が続いても余力を持って戦える体力的な余裕度も高めていかないといけないだろう。

　また、17歳の肩に東京五輪の金メダルという大きなプレッシャーがかかっているのも大きい。全日本選手権は、東京五輪の男子シングルスのエースとして優勝しなければならないという意識が強過ぎたせいか、表情にもプレーにも余裕がなく、毎試合、追い込まれた状態でプレーしているようにも見えた。

　実際、そのことが張本自身の言葉から明白になった。
  　全日本選手権明けのTリーグの試合で、張本は木下マイスター東京の一員として出場し、TT彩たまの神巧也と対戦し、３－０で勝った。

　試合後は、張本は「全日本じゃない試合は楽しいなという気はします。早く観客のみなさんがいる緊張感に慣れて、もっといいプレーがしたい」と語った。

　東京五輪は、開催の可否が見えず、しかもコロナ禍の影響で練習が限られている。だが、個人練習で体力強化を進め、自分のリズムの取り方を意識的に変えていくことはできるだろう。「チョレイ」を心の中で叫び、言葉を発せずともにリズムが取れるようになれば、張本はどんな大会でも試合を楽しめるだろうし、そうなれば世界で勝てる確率がさらに高くなる。

文●佐藤俊（スポーツライター）

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