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【生島淳が見たアスリート】世界記録に迫る!“平泳ぎの新鋭”佐藤翔馬の伸びしろ。五輪代表候補へ急浮上

生島淳

2021.02.09

 この記録の変遷を見ても、彼は日本の競泳選手としては、かなり晩稲(おくて)の部類に入る。佐藤自身、私がインタビューした時にこう話している。

「中学時代、学校から練習場所の東京スイミングセンターまでが遠くて、全国大会を狙う選手が練習しているクラスに入れなかったんです。ただ、結果としてひとつ下のクラスで基礎を大切にして泳ぎ込んだのがプラスに働いたと思います」

 しかも、彼は競泳の世界を諦めていた可能性もあった。

 高校2年まで記録の伸びがさほどではなかったのは、慶應高校時代に医学部進学を考えており、勉強で勝負するか、水泳で勝負するかを決めかねていたからだ。水泳を選択すると、翌年にはジュニアのナショナルチームに選ばれた。

 もともとポテンシャルが高かったのは間違いないが、高校3年でジュニアのナショナルチームに入ったことで階段を一段上がり、大学に入ってから練習量が増えたことで、さらに二段階、三段階上がったような印象を受ける。

 アメリカの選手は大学時代、NCAAルールのために1週間の練習時間に制限があるが、卒業と同時にそのくびきから解放され、練習時間が延びると一気にタイムを上げてくる傾向がある。

 同じようなことが佐藤にも言える。高校時代より、大学入学後に練習量が増えたことで急成長を遂げている印象だ。
 
 そして佐藤は200mが好きだという。

「100mは最初から目いっぱい力を出さなくてはいけないので、僕にとってはハードなんですよ。そのかわり、200mは楽に泳ぎながら速さをキープする感覚なので、そちらの方が好きですね」

 スピード持久力に磨きがかかっており、これからもタイムを伸ばしていくことが期待される。

 そして私は、佐藤に「強運」を感じる。

 もしも去年、予定通りに東京オリンピックが開催されていたとしたら、佐藤は代表になれたかどうか、微妙なところだったのではないか。

 しかし、オリンピックがコロナ禍の影響で延期されたことで、成長期と大舞台が重なる可能性が高まってきた。

 ジャパンオープンでは100mでも優勝し、絶対的なスピードも向上している。

 2021年、佐藤翔馬がどこまで飛躍していくのか、楽しみでならない。

取材・文●生島淳

【著者プロフィール】
いくしま・じゅん/1967年気仙沼生まれ。海外ではNBAやMLB、国内ではラグビー、駅伝、野球、水泳等、幅広くスポーツを追うジャーナリスト。

【PHOTO】東京五輪での躍動を期す競泳スターたちを一挙紹介!
 
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