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ラグビー

ボーデン・バレットが開幕戦で示した一流たるゆえん。熱狂なきスタジアムでもスーパースターか"その気"になれた理由とは?

吉田治良

2021.02.22

 なによりバレットを“その気”にさせるのは、まさに脂が乗り切っている流とCTB中村亮土の日本代表コンビ、オーストラリア代表の突貫小僧サム・ケレビ、スピード豊かなテビタ・リーと中野将伍の両ウイングら、一級品のタレントがひしめくバックス陣だろう。

「アグレッシブなアタッキングラグビーが、自分にとても合っている」

 入団会見でそう語っていたバレットは、オールブラックスの定位置であるFBではなく、サントリーではSOでのプレーを希望。攻撃ラグビーのタクトを振るうことに喜びを感じているようにも見えた。

 この日は将来の日本代表入りを目標に掲げる“弾丸フィニッシャー”のテビタ・リーが圧巻の5トライ、早稲田大卒のルーキー中野将もTLデビュー戦でトライを挙げたが、彼らがのびのびとライン際を駆け上がれたのも、司令塔バレットの巧みなゲームコントロールがあったからだろう。

 相手ディフェンスのギャップを突いてクリーンブレイクを重ねたテビタ・リーはもちろん、バレットから「ポテンシャルがある」とお墨付きを頂戴した中野も、これがデビュー戦とは思えない存在感を放った。とくにNO8テビタ・タタフのトライをお膳立てした、後半立ち上がりのオフロードパス2連発は特筆ものだった。
 
 さらにリザーブにも、SO田村煕(キャノンイーグルスの田村優の弟)、日本代表歴のあるCTB梶村裕介、そして中野将とともに早大を19年シーズンの大学日本一に導いたSH齋藤直人と人材がひしめく。

 後半20分、交代を告げられベンチに退くバレットに注がれたのは、盛大な、というよりは温かみのある、優しい拍手だった。もしかすると、そこはスーパースターの日本デビューにふさわしい舞台装置ではなかったのかもしれない。しかし今季のサントリーは、間違いなくバレットのモチベーションと向上心を喚起するにふさわしいチームだ。

「現状はまだ言葉の壁がある。プレッシャーのかかった状態で、いかに良いコミュニケーションが取れるかが重要だ」

 そう語っていたバレットは、試合中も主将の中村亮や流と何度となく言葉を交わし、交代後もベンチの脇に座り込んで、身振り手振りを交えながら流と熱心に話し込んでいた。途中からはサム・ケレビも加わっての緊急の“三者会談”である。75-7の圧勝劇にも満足する気配は微塵もない。

 コミュニケーションさえ高まれば、このチームはもっともっと強くなる──。

「10番」をまとった大きな背中から、そんな確信が伝わってきた。

 そして、新リーグへの移行を控えたこのTLラストシーズンに、自らの力でサントリーを頂点に導くことができれば、必ずや23年のワールドカップ・フランス大会にもつながるという確信も──。

取材・文●吉田治良

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