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マラソン・駅伝

なぜ「実業団」は消えていくのか?コロナ禍で過渡期を迎える企業スポーツのあり方を考える

酒井政人

2021.03.09

 ダイエー、日産自動車、エスビー食品など名門チームが廃部・休部する時は、会社の経営合理化が主な理由だった。そもそも陸上の実業団チームは、ビジネスモデルとして成立しているとは言い難い。NPB、Jリーグなどのプロリーグは「広告料」「入場料」「物販収入」「放映料」が収益の4本柱になっているが、陸上の実業団チームの場合、上記の収益がほとんどないからだ。

 一方で会社は陸上部の活動費を負担しなければならない。選手12人、スタッフ3人のチームでは、15人分の給料だけでなく、合宿や試合の遠征費なども必要だ。ニューイヤー駅伝で上位を狙うなら外国人選手(主にケニア人)も雇わないといけない。中には陸上部だけの寮を構えているチームもある。年間で億単位の運営費がかかることになる。

 ニューイヤー駅伝で活躍すれば、良いイメージで会社をPRできるだろう。しかし、ニューイヤー駅伝は箱根駅伝ほど人気があるわけではない。全日本に出場したとしても、ブレーキがあったり、下位に沈むことになればネガティブなイメージがついてしまうリスクもある。

 すでに認知度のある企業の場合、単なる「広告宣伝費」として考えると、費用対効果が高いわけではない。また社業をほとんどしていないチームでは、結果が出なければ、従業員や株主から厳しい声が飛ぶこともある。実業団チームの運営はなかなか難しいものがあるといえるだろう。

 逆にいえば、実業団チームは収益化を含めて“新たな価値”を見いだしていかないと、今後も廃部・休部に追い込まれるチームが続出しかねない。
 
 このような状況の中で、実業団駅伝に新たな形で参入するチームが出てきている。ひとつの企業に頼ることなく運営しているクラブチームだ。青学大・原晋監督は「絆ランニング倶楽部(RC)」を創設し、実業団連合への登録を申請中。学生ランナー、市民ランナー、実業団から戦力外通告を受けた選手を集めて、ニューイヤー駅伝の出場を目指すプランを明かしている。

 近年はプロ選手、実業団選手、市民ランナーの垣根がなくなりつつあり、ランナーの多様化が進んでいる。日本の長距離・駅伝界はコロナ禍の中で“新時代”を迎えようとしているようだ。

取材・文●酒井政人

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