さまざまな状況を勘案しつつ、瀬戸が誰からも納得してもらえる状況になるためにはどのような泳ぎが必要だろうか。

　一つ挙げられるのは、４月の日本選手権で急角度の右上がりグラフを描いている姿を示すことだろう。「これなら金メダルを狙える」と期待できるタイムで泳ぐことだ。

　日本水連による東京五輪参加標準のタイム設定は国際水連のものと異なる独自設定であり、今回はほとんどの種目で19年世界選手権での決勝進出ラインとなるタイムに設定されている。瀬戸の場合、200ｍと400ｍの個人メドレーは既に代表に内定しているため、手順としては日本選手権でのタイムや順位は問われないが、五輪本番まで３か月半という時間を考慮すると、４月の時点で五輪の頂点につながるタイムを出すことが望まれる。

　そこで参考になるのが16年の萩野公介と瀬戸の記録、および19年の瀬戸の記録だ。

　16年は、400ｍ個人メドレーを見ると萩野が日本選手権４分８秒90（優勝）→リオ五輪４分６秒05（優勝）、瀬戸は日本選手権４分13秒52（２位）→リオ五輪４分９秒71（３位）。

　200ｍ個人メドレーでは、萩野が日本選手権１分55秒07（優勝）→リオ五輪１分56秒61（２位）。（瀬戸は日本選手権１分58秒30で３位に終わり出場権を得られず）

　19年の瀬戸の400ｍ個人メドレーは、日本選手権４分９秒98（優勝）→世界選手権４分８秒95（優勝）。

　200ｍ個人メドレーは、日本選手権１分56秒69（優勝）→世界選手権１分56秒14（優勝）。
  　この推移に照らし合わせれば、五輪で金メダルを獲るには日本選手権の時点でかなりの好タイムを出しておく必要があることが分かる。となれば今度の日本選手権で瀬戸に期待したいタイムは、200ｍ個人メドレー１分56秒台、400ｍ個人メドレーは４分10秒前後だ。

　さらに、まだ代表権を得ていない200ｍバタフライで代表内定を勝ち取れば、真剣な姿勢が見ている者に伝わるのではないか。

　日本選手権での瀬戸の泳ぎには今までにない注目が集まるだろう。厳しい視線を納得させる泳ぎを見せられるだろうか。

文●矢内由美子

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