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ゴルフ

稲見萌寧はなぜ急激に強くなったのか?コーチが見た“明らかな変化”と根底にある“完璧主義”

山西英希

2021.05.24

 奥嶋コーチの話だと、稲見がパッティング練習で使っている練習器具があり、その上にボールを置いてヘッドの軌道を確認しているという。その練習器具とは真っ直ぐなラインが引かれているボード状のもので、昨年のオフは素振りのときでさえ真っすぐなラインに沿ってヘッドを動かせなかった。

 しかし、そこからアドレスを変えたりして、なんとかストレートの軌道を身につけることができたという。ただ、パッティングでは繊細さを求められるだけに、日頃からストロークの練習は欠かせないのだろう。

 2割のパッティングでそうなのだから、8割を占めるショットの練習がどれだけハードなのかは推して知るべし。今週も月曜から金曜までの5日間でドライビングレンジでの練習時間は25時間を超えていたという。稲見がいつものように、バックスイングでのクラブの上げ方に違和感があると訴えるため、それを解消する方法を奥嶋コーチが見つけなければならない。

 そう簡単に稲見の不安が解消するはずもなく、時間がいくらあっても足りないことになる。それでもかろうじて不安が解消した翌日には「61」を出すのだから、コーチ冥利に尽きるのは確かだ。
 
 考えてみれば、稲見の強さはその不安感にあるのではないか。練習をしなければあっという間にツアーから取り残されてしまうという不安感が常につきまとうから、練習量が増える。その結果、技術が向上し、成績が上がるという流れに乗っているような気がする。自らを完璧主義者というが、不安感に襲われるからこそ、完璧を求めるわけだ。

 今回の優勝で五輪ランキングも上がり、代表選手枠に食い込む可能性も出てきた稲見。国内開催なら間違いなく今の彼女は最強だろう。国内ツアーでの無双ぶりが海外のトッププロを相手にどこまで通用するのか、ぜひ見てみたいものだ。

文●山西英希

著者プロフィール/平成元年、出版社に入社し、ゴルフ雑誌編集部所属となる。主にレッスン、観戦記などのトーナメントの取材を担当。2000年に独立し、米PGAツアー、2007年から再び国内男子、女子ツアーを中心に取材する。現在はゴルフ雑誌、ネットを中心に寄稿する。
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