混合ダブルスの勝利は日本にとって非常に大きかった。
　金メダルを獲ったことはもちろんだが、中国相手に勝ち、「やれるんだ」という自信が男女ともに膨らみ、それが勢いとなって次のシングルス、団体戦へとつながっていった。

　シングルスでは石川が準々決勝で敗れ、メダルに届かなかったが、伊藤はシングルスで銅メダルを獲得。団体戦では準決勝まで３－０という強さを見せて、勝ち上がった。決勝で中国に３－０で負けたが、銀メダルを獲得した。3種目で素晴らしい結果を残したが、一方で「金メダルを目指してきたので悔しい気持ちが大きい。中国は強かった」と伊藤が語るように、選手は中国の強さを改めて肌で感じたようだ。

　リオ五輪以降、中国を倒すべく、選手は個々で力をつけてきた。
　伊藤はTリーグに参加せず、基礎練習をベースとした独自の強化でプレイヤーとしての幅と強さを身に付けてきた。その結果、たびたび中国のトップ選手を倒すまでになり、「大魔王」として中国から恐れられる存在になった。
  　過去、ここまで中国がここまで警戒感を露骨に表した選手はいない。伊藤対策として、伊藤のプレーをコピーした選手を作り、対応してきた。伊藤はそんな徹底マークを気にせず、中国が読めない独特の卓球で相手を混乱させてきた。

　今回、シングルスで伊藤にはその強さを中国相手に見せてほしかった。

　だが、シングルスでは準決勝で孫穎莎に３－０で敗れ、団体戦でも孫に３－１で敗れた。試合後に「相手の流れになった時に自分に戻せない。実力がまだ足りないでの、その流れを引き戻せるようにしたい」と述べていたが、孫や王は過去の中国選手と異なり、速いテンポで強いドライブを打ち返してくる。加えてミスが少なく、対応力もあった。個という視点でいうと、中国のように高速でブレずに打ち返すことを可能にするフィジカルの強化を含めて、まだすべきことが多い。

　ただ、伊藤は個人としては銅メダルからの出発点になる。
　残り２つは、かなり高い山だが、伊藤が乗り越えていけばあとにつづく選手も次々と中国という山をブレイクスルーしていくだろう。