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格闘技・プロレス

酒好きで体調管理には無頓着。でも勝てた――。“20世紀最大の暴君”ピーター・アーツがK1の象徴と言われた所以とは【K-1名戦士列伝】

橋本宗洋

2022.03.15

 この“浮き沈み”のコントラストも彼のキャリアの特徴だ。手痛い敗北を何度も喫した。スネが割れて試合がストップされたこともある。それでもリングに上がり続けて、その時にできる最善を尽くした。

 最盛期には、あまりの強さから“20世紀最大の暴君”というキャッチフレーズがついた。彼とアンディ、ホースト、ベルナルドといったトップ選手たちはテレビ、CM出演などで一般的にも知名度が高かった。強豪揃いのK-1だから、常に勝ち続けるというわけにはいかない。ライバル同士しのぎを削り、勝ったり負けたりしながらドラマを紡いでいった。

 キャリアを重ねるにつれて、敗戦が多くなった。それでもアーツは腐らず闘い続けた。総合格闘技にも挑戦。旧体制のK-1が活動しなくなると、IGFにも参戦した。華やかさ、豪快な倒しっぷりだけでなく、その“不屈”ぶりも記憶に残る。

 2006年のK-1アムステルダム大会ではホーストとボブ・サップが対戦する予定だったが、サップが試合直前になって出場拒否。そのため中継の解説として会場に来ていたアーツが、急きょ代役を務めた。何の準備もなくとも、必要とされればリングに上がる。何のためかといえば、愛するK-1のため、長くライバルとして現役を盛り上げてきたホーストのため。それを象徴する出来事だった。

 残した結果、リングに上がり続けた貢献度、ファンからの愛され方。“暴君”はK-1に欠かせない存在、つまりK-1の象徴だった。勝つ喜びも負ける切なさも、すべて見せてくれたのだ。

文●橋本宗洋

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