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ゴルフ

なぜ連続予選落ちから“全英V争い”を演じられたのか? 大会との相性ではない渋野日向子の印象的だった強さ

山西英希

2022.08.12

 また、パーオン率も75パーセントと、それまでの平均70.47パーセントを上回っていた。開催コースのミュアフィールドはリンクスの中でも屈指の難易度と言われているが、海からの強烈な風が吹きつけるなか、4日間を通して多くのホールで距離感をしっかり合わせていたのは特筆に値するだろう。

 今回、改めて3年前よりも渋野の体格ががっしりとした印象を受けたが、トレーニングにより体幹がしっかりしたことで、ドライバーショットを含めた全体的なショットの安定感が増したのではないか。さらに、現在のスイングはフラットな軌道になっているだけに、ボールが高く上がりにくい。その分、風の影響を受けにくかったことも考えられる。

 ただ、大会前の2試合と大きく違うのは、スイングに思い切りのよさを感じたことだ。今大会では予選落ちとなった勝みなみが帰国後、次のように語っていた。

「風が強く、ポットバンカーもあるので、曲げたくないと思うじゃないですか。でもその気持ちがスイングを小さくしてしまうんです。そうなると振れてないから逆に曲がってしまうんですよね」
 
 勝は2日目の残り5ホールを迎えて、ようやく曲がってもいいから思い切って振ってみようという考えにした途端、ボールが真っ直ぐ飛び出したという。渋野はそのようにコメントこそしていなかったが、『AIG全英女子オープン』での思い切りのいいスイングを見ると、『スコットランド女子オープン』を終えてから今大会の初日を迎えるまでの間に、気持ちをそのように切り替えたのではないだろうか。

 考えてみれば、今季の渋野はルーキーながらも、『AIG全英女子オープン』の前までにCMEグローブランキングで36位につけていた。世界のトップクラスが集う米女子ツアーでその位置にいる選手がメジャーで優勝争いしても不思議ではない。ましてや、メジャーチャンピオンであり、この3年間でメジャーのトップ5に2回入った選手でもあるのだ。

 調子の波が最低だったところから、いきなりトップギアまで上げてしまうのは予想外だったが、それが渋野の強さでもある。今回の活躍で、試合に対する集中力さえ高まれば、メジャー2勝目も十分期待できることを改めて証明したのではないだろうか。

文●山西英希  
著者プロフィール/平成元年、出版社に入社し、ゴルフ雑誌編集部所属となる。主にレッスン、観戦記などのトーナメントの取材を担当。2000年に独立し、米PGAツアー、07年から再び国内男子、女子ツアーを中心に取材する。現在はゴルフ雑誌、ネットを中心に寄稿する。

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