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格闘技・プロレス

茶番と揶揄される一戦に抱く“幻想”とは。「厳粛な真剣勝負」とは違うメイウェザーvs朝倉未来をどう見るべき?

橋本宗洋

2022.09.23

全盛期ではないメイウェザーを相手に、未来はどのような試合展開を見せるのか。その一端をすでに本人は明かしている。(C)Getty Images

全盛期ではないメイウェザーを相手に、未来はどのような試合展開を見せるのか。その一端をすでに本人は明かしている。(C)Getty Images

 言うまでもなく、メイウェザーは超一流のアスリートだった。現在45歳、引退して実力は衰えているとはいえ、それでも今なお一級品だと言われている。対する未来はと言えば、“不良出身”だ。10代の日々はケンカ三昧。ついには少年院送りとなると、そこから『THE OUTSIDER』で頭抜けた強さを見せ、RIZINでも勝利を重ねてトップ選手になった。対戦相手を研究して“丸裸”にしてしまう戦略眼も優れている。

 そんな未来なら、つまり“競技”とはまた別の軸を持つ男なら、メイウェザーをたじろがせることができるのではないか。そういう“幻想”があるのだ。

 もし、未来のパンチが当たって、メイウェザーが少しでもよろめくようなことがあれば世界が驚く。そのために未来はボクシングルールの練習を重ねてきた。とはいっても、ボクサーを招いてのスパーリングはしていないそうだ。どんな選手とやっても“仮想メイウェザー”にはならず、他でもない本人もボクシングをやる気はないからだ。

「メイウェザーのパンチは無視。きれいに闘おうとしたら相手の土俵になってしまうので。フィジカルを使って、もらいながらでもどんどん(距離を)詰めていこうと」
 
 カウンターを狙って取れるような相手ではない。それは未来も分かっている。だからこそ被弾しながらでも距離を詰め、乱戦、混戦に持ち込もうというのだ。そこで少年時代に打ち込んだ空手が役に立つとも考えている。MMAのパンチ、空手の突きはボクシングとは別物。間合いや軌道が違う。

 もし、未来がメイウェザーの経験値にない攻撃ができたら――。それがつまり“幻想”だ。可能性は決して高くないだろう。しかし“万が一”を引き寄せられるのではないかというのも、未来が持つ幻想だ。だからこそ、彼はメイウェザーの相手に選ばれたのである。

 メイウェザーが現実を見せつけるか、未来の幻想が爆発するか。「どうせメイウェザーの圧勝だろ」と冷めた目で見るよりも「未来なら何かやってくれるんじゃないか」と思ったほうが楽しいではないか。

取材・文●橋本宗洋

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