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食と体調管理

「やらなきゃ後悔するようなことは、まずやってみる」元スピードスケート日本代表・髙木菜那さんの競技への信念と食事への取り組み方

矢内由美子

2022.11.01

写真:THE DIGEST

写真:THE DIGEST

■「せっかく行くならオランダに染まろう」

――ソチオリンピックが終わった後の2014年春から1年間、スケート王国のオランダに行くことになりました。どんな気持ちでしたか。

 海外で生活しながらスケートをするという新しい経験に対して、すごくポジティブな気持ちでしたね。その時の私は、スケートが速くなるのだったらどんなところでも行くという気持ちでした。

 もちろん、海外に行ったから必ず速くなれるという訳ではないですし、あらかじめ分かっている答えもありません。全部、自分次第だと思います。

 その中で、オランダの文化やオランダの選手が速い理由など、いろいろなことを吸収したいと思っていました。せっかく行くなら染まろうという感じですね。そうじゃないと行く意味がないのではないかと思うんです。

――まずは受け入れてみるというお考えでしょうか。

 自分の滑りや、自分のやっていることに対して信念持つのは大事なのですが、せっかくオランダに行ってるのに、自分はこうだからと最初から決めつけて新たなことに取り組まないのは、もったいないと思います。

 速くなるかならないかは正直分からなかったのですが、オランダでは一旦全部を受け入れてやってみて、そこで自分がどう変わるかというのを試しながらやっていました。

――考え方が柔軟ですね。

 自分の信念はあります。でもプライドはないし自信もないから、もっと速くなるためにオランダ人のトレーニング方法やオランダ人の滑りをまずは吸収する。スピードスケートは奥が深いですし、それぞれの体格や体形によって“正解”となる滑りは異なります。やはり、オランダに行くなら、その時にしか経験ができないことを自分で取り入れていくという考えがありました。

 それと、基本的にやらなきゃ後悔するようなことは、まずやってみるというのが私の性格。ダメなら次の新しい道を探せばいいと思うんです。もちろん、考え方は人それぞれですが、自分が思ったことを行動に移せるのは私の長所だと思っています。それで失敗することもめちゃくちゃありますけどね。
 

写真:THE DIGEST

――信念はあるけど、プライドはないとはどのような意味合いですか。もう少し詳しく教えて貰えますか。

 信念というのは自分のやってきたことや過程、自分がやっていく上でこれは大切だと考えることや、速くなるためにずっとやり続けてきたことです。自分で体感して確信したことはすべて信念になっています。

 反対に、プライドによって変化を拒んで自分の可能性を潰してしまうのはもったいないと思います。自分より速い人がいる時に、ある部分を変えればもっと速くなるかもしれません。

――それはジュニアアスリートにも響く言葉ですね。

 プライドが邪魔するというのは、ジュニア世代でもありえると思うんです。例えば、小学校までずっと強くて、みんなからすごいねと言われていた子が、途中でスランプになってしまったとします。そこで、自分は今まで強かったからというプライドが邪魔して、それ以上速く、強くなることを求めるのをやめてしまうのはもったいないことだと思います。

 コーチから指摘を受けた時に、心の中ではプライドがあって、“いや、自分はこうだから”と思ったとしても、違う視点を取り入れたらもっとバージョンアップできるということは実際によくあるケースだと思います。聞いたことをまずは素直にやってみて、そのうえで自分で考えることが大切なのではないかと思いますね。

 それに体は1日1日でも変わります。筋肉のつき方もそうです。年齢を重ねると疲れが残ってしまうことも増えていきます。昔はこれが良かったんだという概念は捨てて、今どうやったら良くなるかということに目を向ける選手の方が強くなると思います。
 

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