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【名馬列伝】「日本に連れて行く」名伯楽が惚れ込んだ名牝ファインモーション。産駒残せぬも、21年前の金字塔は消えず

三好達彦

2023.09.24

 そして迎えたデビュー戦。単勝オッズ1.1倍という圧倒的な支持を受けての出走となったが、スピードの違いで先頭に立つと、後続には影をも踏ませず、4馬身(0秒7)差で逃げ切って楽勝。鮮烈な走りを見せたことから翌春への期待が大きく膨らんだ。

 ただ本馬はアイルランド生まれであり、当時は外国産馬のクラシック競走への出走が認められていなかった(限定的に出走が可能になったのは、桜花賞が2004年、オークスが2003年)。そのため、疑うべくもない天賦の才の持ち主である彼女の将来を考えて無理をさせないことを決定。軽い骨折もあって、春は全休して成長を促した。

 戦列に復帰したのは8月4日の函館、500万下(現1勝クラス)の芝2000m戦だった。伊藤が「仕上げは65%程度」というなか、松永幹夫を鞍上に迎えたこのレースでは、逃げ馬の直後で折り合って進むと、直線で先頭を奪うと、ほぼ馬なりで後続を置き去りにし、2着に5馬身(0秒9)もの差を付けて圧勝した。

 次走は8月25日。1000万下(現2勝クラス)の阿寒湖特別(札幌・芝2600m)に出走。彼女はここでも3番手からあっさり抜け出すと鞍上に追われることもないまま後続をぶっちぎり、5馬身(0秒8)差をつけて無傷の3連勝を果たす。いよいよ、同世代の女王を目指しての戦いに臨んでいくのだった。
 
 秋華賞(GⅠ、京都・芝2000m)のトライアル戦、ローズステークス(GⅡ、阪神・芝2000m)。桜花賞馬のアローキャリーなどの強豪を押しのけて単勝1.2倍の1番人気に推されたファインモーションはここでも3番手からあっさりと前の2頭を交わすと、あとは独走状態に持ち込む。結果、2着のサクラヴィクトリアに3馬身(0秒5)差をつけて、無敗での重賞初制覇を達成。騎乗した松永は「まだ能力の半分も出していない」と、あらためて彼女の図抜けた能力を絶賛した。

 迎えた10月13日の秋華賞。伊藤は「仕上げは85%ぐらい」と評したが、デビュー戦以来のタッグとなる武豊を再び鞍上に迎えたことも彼女の人気を後押しし、単勝はオッズ1.1倍という絶大な支持。ちなみにファインモーションか記録した単勝支持率「約72%」という数字は、1984年のグレード制導入以降のGⅠでは最高記録だった。

 12番枠からスタートしたファインモーションは5番手付近の好位置をキープ。第3コーナーから徐々にポジションを上げながら2番手で第4コーナーを回った。

 すると、今回も逃げたユウキャラットをあっさり交わして先頭に躍り出ると、さほど強く追われることなく後続を突き放したために武は追うのをやめたが、それでも後方から追い込んだサクラヴィクトリアに3馬身半差(0秒6)を付けるレースレコードで楽勝。デビューから無敗の5連勝でGⅠタイトルを手にすると同時に、事実上、世代の頂点に上り詰めた。
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