石川の初公式戦をコートエンドの関係者席で見守ったワニー・ディ・フィリッポ会長は、革職人として高級皮革を製造販売する会社、『イル・ビゾンテ』を立ち上げ、一代で海外展開するまでに押し上げた人物だ。顔を包むように蓄えた髭とボルサリーノハットに鮮やかな色彩のスカーフがトレードマークで、時にその髭をチームカラーの青に染めてしまうほどの熱いクラブ愛、独特な風貌と気さくな人柄は、リーグでも有名だ。

　その会長をよく知る人気解説者の元同国男子代表、アンドレア・ルッケッタ氏に、石川のイタリア挑戦について対面取材すると、こう話してくれた。

「異なる文化を理解してここイタリアに馴染むために、フィレンツェは最適な場所だよ。なによりも、良い意味で強烈に個性的な会長が、選手たちを家族の一員として迎え入れてくれる。マユの成長にとって大正解のクラブを選んだと確信している」と移籍の成功を予見。
  　技術面においては、「セリエA参戦はマユに大きなチャンスを与えることになる。男子と比べて突出したチームが限られる女子のリーグだからこそ、マユは日本で積んだ経験でチームを多大に助け、結果に繋げる存在となるだろう。そして、イタリアでプレーすることは、これ以上ない成長をもたらすはずだ」とエールを送ってくれた。

　次戦は、現地10月15日に行なわれる第２節。昨季レギュラーシーズンを全14チーム中10位で終えたフィレンツェは、同12位で残留を果たしたウォッシュ４グリーン・ピネローロと対戦する。ホーム初戦を白星で飾れるか、石川の活躍に期待が集まる。

取材・文●佳子S.バディアーリ

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