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食と体調管理

常に観察し、失敗を怖れず挑戦を繰り返して前へ――。「失敗は成功のもと」を実証してつかんだオリンピック代表キャプテン。食生活からもうかがえるブレない姿勢

THE DIGEST編集部

2023.11.01

©ZEEKSTAR TOKYO

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■フランス留学で訪れた大きな転機

――そしてハンドボールから離れて、フランスへ語学留学に行かれます。

 ハンドボールを辞めるとなって将来にむけた自己分析をした結果、ハンドボール以外は何もできないなと。そんな状態で就職活動をしたくなかったので、ある程度アピールポイントが必要だと考えました。

 フランス語を少し話せたので、フランスに1年行って、そのあと英語圏に行って、それで帰国して3カ国語ぐらい話せれば、就職先の可能性が広がるだろうと考えて、まずはフランスに行きました。

――そのフランス留学中、膝の痛みが消えました。

 ものすごく嬉しかったです。ハンドボールを辞めてから半年ほど経った時期でした。

――そして留学先だったフランスのシャンベリのチームへ入団されます。

 留学先にシャンベリを選んだのは、フランス代表で世界的に有名なハンドボーラーがおり、日本の実業団でもプレーしたステファン・ストックランの出身地だったからです。シャンベリにあるシャンベリ・サヴォワ・ハンドボールというチームは、ハンドボール人気が高く、フランスの中でもチャンピオンズリーグの常連のような強豪チーム。平日は勉強して週末に試合が見られたらいいなという感じで選びました。そうしたら膝が治った。プロチームには下部組織がたくさんあるので、どのカテゴリでもいいのでプレーさせてください、と直談判しに行きました。

――入団したチームはどのカテゴリだったのでしょうか?

 トップチームのひとつ下、フランスリーグでいうと3部リーグ所属のチームに入りました。フランスで18~22歳のエリートが集まるBチームのような位置づけです。フランスリーグ3部は日本のトップリーグと同じぐらいのレベル。自分も大学時代に日本の実業団チームからお声掛け頂くレベルではあったので、通用するレベルではあったかと思います。でも、一度引退を決断した身だったので、その時はトップを目指す気持ちもなく、趣味程度にまたハンドボールができればいいと思っていました。

――そんなご自身の気持ちとは裏腹に、トップへと駆け上がっていきます。

 フランスリーグで試合に出るには、ライセンスなどの手続きがあるので、試合出場が難しいことはわかっていました。なので、練習だけ参加できればいいという気持ちだったんです。1年経ったら英語圏に行くというプランは変えていなくて、チーム内でローカルなフランス語を学べるくらいの気持ちでしたね。またハンドボールができる喜びとともにノープレッシャーで楽しくやれていました。

 それで毎日練習に参加していたら、監督の方から「試合に出てくれ」とお願いされて。もうシーズンの半分ぐらい過ぎていたのですが、そこから試合ですごく活躍できて有名になっていくうちにトップチームからプロ契約の話がきました。想像していなかったので驚きましたが、プロになるチャンスなんだから挑戦しようと決めました。
 
■ハンドボールの本場・フランスで感じた楽しみと苦しみと

――フランスでハンドボールは大人気スポーツです。本場では何を感じましたか。

 ハンドボールがずっと楽しいことに変わりはありませんでしたが、環境は日本とは全然違いました。選手たちの本気度、危機感、プロ意識。あとはメンタル面と戦術面ですごく勉強になりました。

――そのなかで手ごたえを感じたことは。

 体力面と技術面に関しては上回っていると感じる部分も少なくなかったです。メンタル面と戦術理解度という点を深めれば、全然通用するという自信はありました。

――一方で、フランスでは人種差別に悩まされたとも。

 僕の場合はアジア人差別でした。言葉で責められることが毎日のようにあって、最初はチームメイト、スタッフ、サポーターからも受けました。それで徐々に悩むようになり、追い込まれ…。でも、自分で切り替えることができて立ち直って溶け込んで。それでまた前に進めたみたいな感じでした。

――切り替えることは簡単なことではないと思います。

 周りを変えることなど無理だなと。であれば、自分から適用していこうという方向に考え直しました。

――「自分で考えて状況を改善していく」ことは土井選手がずっと言ってきたことです。

 そうですね。子どもの頃に親に「教えて」って聞くと、「じゃあ見せてあげるから真似して」って返されるんですね。見て真似をするということは、まず観察力が鍛えられる。そして最初は絶対に失敗する。でも失敗しても教えてくれないから、自分で考えるしかない。自然と僕は幼い頃からトライアンドエラーをやってきて成功に結びつけていたんです。
 

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