鮮やかな一発ではなく、捻じ伏せるような闘い。一方で「無理に倒しにいってKOできるほどボクシングは甘くない」と深追いはしなかった。
  　勝負が決したのは10ラウンド。ジャブから右ストレートのワンツー、さらに踏み込んでまたワンツー。ガードごと吹き飛ばすような攻撃で、タパレスはロープまで後退し、そして倒れた。

　井上としてはフィニッシュの意思を込めたパンチではなかった。ダメージが蓄積し、限界値を超えたということだろう。そこまでタパレスは耐えた。勇敢で井上相手にも怯むことがなかった。最後まで執念を見せて、その結果として試合は見応えのあるものになった。タパレスは讃えられるべき敗者だった。

　あらためてスーパー・バンタム級での強さを示した井上は、向こう2年はこの階級で闘うという。来年５月には東京ドーム大会を行なうという噂も。ますます勝ち方が問われることになりそうだが、井上ならどれだけ高いハードルも超えてしまうのではないか。そう確信できる一戦でもあった。

文●橋本宗洋

【動画】勝負が決した第10ラウンド！ 井上尚弥の右ストレートが炸裂!!