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【名馬列伝】東西を代表するトップ調教師の“合作”とも称されたエピファネイア。桜の女王の活躍次第では、種牡馬のさらなる価値向上も

THE DIGEST編集部

2024.04.20

 2014年、秋の天皇賞(GⅠ、東京・芝2000m)を0秒2差の6着としたのちに参戦した11月30日のジャパンカップ(GⅠ、東京・2400m)。メンバーはジャスタウェイ、ジェンティルドンナ、ワンアンドオンリー、スピルバーグ、イスラボニータ、ハープスターと、GⅠホースがずらりと顔を揃えた超ハイレベルな一戦となった。

 エピファネイアは鞍上にフランスのトップジョッキーであるクリストフ・スミヨンを迎えてレースに臨むと、3番手という好位置を進み、直線の坂に入るとほぼ「持ったまま」で先頭に躍り出る。そして、スミヨン騎手のゴーサインを受けると一気に差を広げて独走状態に持ち込み、2着のジャスタウェイに4馬身差を付けて圧勝。菊花賞以来、久々の勝利を挙げた。

 しかも、このハイパフォーマンスが世界に評価され、『ワールドベストホースランキング』で本年の2位(129ポンド)にランクされる栄誉に浴した。ちなみに1位は前年の天皇賞(秋)を圧勝して130ポンドを得たジャスタウェイ(ジャパンカップでも2着)で、日本馬が世界のワンツーに堂々ランクインした。

 翌年、ドバイワールドカップ(GⅠ、メイダン・ダート2000m)に遠征したエピファネイアは9着に惨敗。6月の宝塚記念(GⅠ、阪神・芝2200m)に向けて調整されていたが、その過程で左前肢に繋靭帯炎を発症。回復までには長い時間を要するという所見を受けて現役を引退。種牡馬入りが決定し、社台スタリオンステーションにスタッドインした。
 
 ところが、種牡馬としてのエピファネイアに対する評価は賛否相半ばした。

 血統的には、父シンボリクリスエスがそれまで後継種牡馬となるほどの大物産駒を出していなかったことが懸念されたこと。もうひとつは、強い勝ち方はしたものの、GⅠ2勝という成績が物足りないという声があったのも確かだった。それでも、社台スタリオンステーションに繋養されたブランド価値に加え、種付料が250万円と手ごろだったことや、サンデーサイレンス系との牝馬と交配しやすいことも手伝って、初年度から221頭もの繁殖牝馬を集めた。

 エピファネイアは初年度産駒の勝ち上がり率が優秀で、一定の評価を受けていたが、そのなかなら飛び出したのが、無敗の牝馬三冠を達成したデアリングタクトだった。

 2年目以降も、200頭以上の交配牝馬を集める人気種牡馬となっていたエピファネイアの種付料は2020年には500万円に上がっていたが、デアリングタクトの活躍で21年には倍増の1000万円にジャンプアップ。さらにエフフォーリア、サークルオブライフが大活躍したため、22年の種付料は1800万円まで跳ね上がった。

 本年は料金が下げられているが、それでも三冠馬コントレイルと並んでの1500万円であり、先日の桜花賞を制したステレンボッシュの今後の活躍次第では、次年度もまた大きくアップするかもしれない。

 筆者のエピファネイアに対する印象は、何と言ってもジャパンカップで見せた圧勝劇で、並み居る強豪たちを置き去りにしたシーンはいまも強く記憶に残っている。また、元調教師である藤沢和雄氏が管理したシンボリクリスエスと、「世界のスミイ」と称された角居勝彦・元調教師のシーザリオの子は大きな関心を集め、当時の東西を代表するトップトレーナーによる「合作」というイメージもいまだに強い。

 それと同時に、海外での大きな成果を含め、競馬シーンを長年引っ張ってきた名トレーナー2人が引退して、いまや競馬界の最前線にいないという喪失感をあらためて覚えた次第である。

※本項に表記した種付料は、すべて「受胎確認後支払い」の条件が付いている。

文●三好達彦

【動画】ハイレベルなメンバーを蹴散らしたエピファネイアのジャパンCをプレイバック
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