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競馬

【名馬列伝】波乱を呼び起こす個性派メジロパーマー。紆余曲折の競走馬生活だからこそ生まれた魅惑の逃走劇<後編>

三好達彦

2024.07.16

 話を戻すが、この異例のタフさを強いる阪神競馬場の馬場状態が、スピードよりもスタミナに勝るメジロパーマーに味方するのではないかと、穴馬の候補にするマスコミも相当数あった。ただし気になるのは同型馬、逃げて好成績を挙げてきたダイタクヘリオスの存在で、メジロパーマーがこの馬との位置取りをどうするのか。雁行状態で2頭とも潰れるのではないか?などど、さまざまな憶測を呼びながらレースを迎えた。

 ゲートが開くと、外から2番目の12番枠から飛び出したメジロパーマーが、内から先頭を窺おうとしたダイタクヘリオスを制するように先頭を奪取。ダイタクヘリオスが無理して競りかけてこなかったため、単騎逃げというパーマーにとって注文通りのレース展開となった。

 向正面に入るとダイタクヘリオスが行きたがったため、やや差が詰まるシーンもあったが、パーマーは泰然自若。荒れた馬場をまったく気にせず第3コーナーから後続を引き離しにかかると、スタミナを失ってバタバタするダイタクヘリオスをはじめとして後続との差は開くばかり。直線に入っては独走態勢を固め、スタンドからの大歓声と悲鳴が入り混じるなか、追いすがろうとする1番人気のカミノクレッセに3馬身もの差を付ける圧勝でGⅠタイトルを手にしたのだった。

 関西テレビで実況中継したアナウンサーの杉本清は、「メジロマックイーンは出走回避。しかし勝ったのはパーマー、メジロパーマーです。メジロ軍団、恐るべし!」と伝えている。

 いったんは平地戦線から脱落し、障害に新天地を求めた“はぐれもの”の、強烈すぎる逆襲劇だった。
 
 馬券上の人気はともかく、「面白い馬」「現役きっての個性派」として一気に注目を集めるようになったメジロパーマーは、夏を故郷のメジロ牧場で過ごし、10月の京都大賞典(GⅡ)で戦列に復帰。前日の落馬で骨折していた山田泰誠だったが、パーマーの秋初戦ということで無理を押して騎乗したが、2番人気の高評価を裏切って9着に敗れる。

 そして、パーマーは秋の目標のひとつとしていた秋の天皇賞(GⅠ)に向かうが、山田の骨折が治り切らなかったため、鞍上は藤田伸二に任される。そして、これが歴史に残る壮絶なレースとなる。
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