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ラグビー

コロナ禍では無所属で孤独な練習に耐える日々も… ラグビー日本代表、李承信が持ち続ける強固な「信念」はいかにして作られたのか?

向風見也

2024.09.20

フルバックとして先発した李は、後半途中からスタンドオフとしてプレー。八面六臂の活躍をみせた。(C) JRFU

フルバックとして先発した李は、後半途中からスタンドオフとしてプレー。八面六臂の活躍をみせた。(C) JRFU

 目の前の職務を全うする考えは、昔から備わっていた。

 大阪朝鮮高から入った帝京大を1年で中退したのは2020年。折からのウイルス禍で、退学後に計画していたニュージーランド留学ができなくなった。

 同世代のライバルがそれぞれのチームで汗を流すなか、李はたったひとりで地元の公園で鍛錬に励んだ。現所属先のコベルコ神戸スティーラーズに誘われるまで、孤独に耐えた。
 
 いったいなぜ、雌伏の期間に辛抱できたのだろうか。

 代表選手となったいま、記憶の奥底を掘り返して答える。

「うーん、ひとりで練習するのに対して、あまり苦に思っていなくて。自分が小学5年で母親を亡くして、そこからは学校の部活が終わると自分で4キロくらい、走りに行っていました。ストレスがたまったり、思うことがあったりすると、走っていたんです。ラグビーをしたり、走ったりしている頃には、忘れられますし…。そうした習慣が癖になって、ひとりでトレーニングをせざるを得ない時もいつも通りにできましたね」

 それとほぼ同時期に、兵庫県ラグビースクールの一員として臨んだ「県大会の決勝」で黒星を喫したことにも影響を受けたようだ。

「それまで自分が一番うまいと思っていたんですけど、負けて上には上がいると思い、そこから努力を始めた感じですね。何か、人と違うことを2倍くらいしないと成長できないというのは、昔から感じていたので。そういうところに、小さい時から気づけてよかったと思っていますね」

 力強いフレーズを淡々と並べる。

「自分の中で達成したいゴールというか、目標が常にあった。信念というか、軸があったからこそ、(たったひとりでの鍛錬も)できていた部分があった」

 運命を背負う流れで、物事をやり抜くのに必要な「信念」を作ってきた。今度の成功体験もいつかの挫折を肥やしに、内なる願いを叶える。

取材・文●向風見也(ラグビーライター)

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