このレースの主役は、デビュー以来7戦7勝、史上2頭目となる無敗の三冠馬となったディープインパクト。爆発的な末脚を武器に無双の進撃を続ける3歳馬に対して、ファンは単勝オッズ1.3倍の1番人気という圧倒的な支持を示した。
対するハーツクライは、ジャパンカップで英国の強豪とハナ差の激闘を演じたにもかかわらず、前年に秋の古馬三冠を制したゼンノロブロイと、菊花賞馬デルタブルースにも先を譲っての4番人気(オッズ17.1倍)に甘んじていた。しかし調教師の橋口と騎手のルメールは、自信とまでは言わないまでも、そうした低評価に対する反発を胸に大一番へと臨んでいた。
ゲートが開くとルメールは驚きの戦法を繰り出す。それまで指定席となっていた最後方からはるか前、何と3番手につけるという思い切った先行策に打って出たのだ。
逃げたタップダンスシチーが刻んだラップタイムは、1000mの通過が62秒1というスローペース。先行勢に有利な流れとなり、それを察知した武豊はディープインパクトを促して2週目の第3コーナー手前から徐々に位置を押し上げて直線へ向く。
逃げ込みを図るタップダンスシチーとコスモバルクを交わし、早めに先頭に立ったハーツクライ。それを外から追うディープインパクト。中山競馬場の熱気が最高潮に達し、大方のファンがディープインパクトの差し切り勝ちを思い描いた直線坂上。ハーツクライは二の脚を使ってしぶとく粘り、迫るディープインパクトを半馬身抑えて見事に金星を手中に収めたのである。
2頭がゴールを過ぎると中山は悲鳴と大きなため息に包まれ、そのあと場内は落胆の静寂に包まれた。ディープインパクトのファンはまだ現実を受け入れられない様子で、声も出せず、ただ黙りこくっていたのである。そんな異様な空気のなかで”新王者”ハーツクライの表彰式は行なわれた。
国内GⅠ勝利は有馬記念のひとつだけながら、宝塚記念とジャパンカップの2着も評価されて2005年JRA賞の最優秀4歳以上牡馬を受賞したハーツクライ。その授賞式の席上で、06年は海外遠征を敢行すると陣営から発表され、大きな注目を集めた。
5歳となり、充実のときを迎えたハーツクライが渡ったのはUAEで行なわれるドバイ・ワールドカップ・ミーティング。5つものGⅠレースが組まれたなかで、彼が出走したのは準メインのドバイシーマクラシック(芝2400m)だった。
ここでまたルメールとハーツクライは驚きの走りを見せる。好スタートを切り、するすると先頭に立つと、そのまま逃げの手に出たのだ。レースはそのままハーツクライのペースで進み、直線へ向くと追いすがる後続を力強い末脚で突き放し、何と2着のコリアーヒル(Collier Hill)に4馬身1/4差を付け、逃げ切りで圧勝を飾ったのだった。それは「ディープインパクトを破った馬」から「世界のハーツクライ」へと飛躍を遂げた瞬間でもあった。
対するハーツクライは、ジャパンカップで英国の強豪とハナ差の激闘を演じたにもかかわらず、前年に秋の古馬三冠を制したゼンノロブロイと、菊花賞馬デルタブルースにも先を譲っての4番人気(オッズ17.1倍)に甘んじていた。しかし調教師の橋口と騎手のルメールは、自信とまでは言わないまでも、そうした低評価に対する反発を胸に大一番へと臨んでいた。
ゲートが開くとルメールは驚きの戦法を繰り出す。それまで指定席となっていた最後方からはるか前、何と3番手につけるという思い切った先行策に打って出たのだ。
逃げたタップダンスシチーが刻んだラップタイムは、1000mの通過が62秒1というスローペース。先行勢に有利な流れとなり、それを察知した武豊はディープインパクトを促して2週目の第3コーナー手前から徐々に位置を押し上げて直線へ向く。
逃げ込みを図るタップダンスシチーとコスモバルクを交わし、早めに先頭に立ったハーツクライ。それを外から追うディープインパクト。中山競馬場の熱気が最高潮に達し、大方のファンがディープインパクトの差し切り勝ちを思い描いた直線坂上。ハーツクライは二の脚を使ってしぶとく粘り、迫るディープインパクトを半馬身抑えて見事に金星を手中に収めたのである。
2頭がゴールを過ぎると中山は悲鳴と大きなため息に包まれ、そのあと場内は落胆の静寂に包まれた。ディープインパクトのファンはまだ現実を受け入れられない様子で、声も出せず、ただ黙りこくっていたのである。そんな異様な空気のなかで”新王者”ハーツクライの表彰式は行なわれた。
国内GⅠ勝利は有馬記念のひとつだけながら、宝塚記念とジャパンカップの2着も評価されて2005年JRA賞の最優秀4歳以上牡馬を受賞したハーツクライ。その授賞式の席上で、06年は海外遠征を敢行すると陣営から発表され、大きな注目を集めた。
5歳となり、充実のときを迎えたハーツクライが渡ったのはUAEで行なわれるドバイ・ワールドカップ・ミーティング。5つものGⅠレースが組まれたなかで、彼が出走したのは準メインのドバイシーマクラシック(芝2400m)だった。
ここでまたルメールとハーツクライは驚きの走りを見せる。好スタートを切り、するすると先頭に立つと、そのまま逃げの手に出たのだ。レースはそのままハーツクライのペースで進み、直線へ向くと追いすがる後続を力強い末脚で突き放し、何と2着のコリアーヒル(Collier Hill)に4馬身1/4差を付け、逃げ切りで圧勝を飾ったのだった。それは「ディープインパクトを破った馬」から「世界のハーツクライ」へと飛躍を遂げた瞬間でもあった。
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