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競馬

【名馬列伝】「天馬」と讃えられる優駿を輩出したトウショウ牧場。名門の落日前に異彩を放った“破天荒キャラ”スイープトウショウの生涯

三好達彦

2025.02.02

 牧場時代から抜群の素質を見せていたスイープトウショウは、2003年の秋に栗東トレーニング・センターへ入厩するのだが、そこで思わぬウィークポイントが見つかった。それは、自分の気が向かないと馬場入りを拒否して立ち尽くし、短いときで数分、酷いときは1時間近く動こうとしないのだ。そして稀だが、騎乗者が諦めて馬場へ入らずに厩舎へ戻ることも、また鞍さえも付けさせなかったというから、その悍性のキツさはかなりものである。

 これはレースに行ってのゲート入りでも同様で、たびたび枠に収まることを拒否し、短いときで2~3分、特に悪いときには10分も脚を踏ん張って動こうとしなかった。そのため「発送調教再審査」の罰を課されたほか、度重なる枠入り不良のために、エリザベス女王杯のあとには「30日の出走停止とゲート再審査」という重いペナルティを課されるほどだった。

 しかし一方で、この強い悍性がレースでの闘争心へと転化され、彼女のはまった際の爆発的な走りの原動力になっていた面もあるだろう。
 
 スイープトウショウのデビューは2歳の10月。新馬戦(京都・芝1400m)、ファンタジーステークス(GⅢ、京都・芝1400m)を連勝。続く阪神ジュベナイルフィリーズ(GⅠ、阪神・芝1600m)は単勝1番人気に推されながら、追い込み切れずに5着に敗れて2歳シーズンを終えた。

 3歳となった彼女は、初戦の紅梅ステークス(OP、京都・芝1400m)、チューリップ賞(GⅢ、阪神・芝1600m)を連勝。牝馬三冠の第一関門である桜花賞(GⅠ、阪神・芝1600m)では2番人気の評価を受けたが、いつものようにゲート難によってほぼ最後方からの競馬になり、追い込んだものの、ダンスインザムードの5着に敗戦。続くオークス(GⅠ、東京・芝2400m)では中団の後ろ目を進むと、府中の長い直線を生かして末脚を爆発させ、勝ったダイワエルシエーロから3/4馬身差の2着に食い込んだ。

 ひと夏越しても気性の難しさは治らなかったが、牧場と厩舎スタッフ、手綱をとる池添謙一が苦心しながら彼女の扱い方に慣れていったため、結果はゲート次第という面があったものの、ビッグタイトルへ続く道には光明が射してきていた。

 トライアルのローズステークス(GⅡ、阪神・芝2000m)を僅差の3着として迎えた牝馬三冠の最終戦、秋華賞(GⅠ、京都・芝2000m)。ここもゲートの出は優れずに後方からのレースとなったが、直線で異次元の末脚を繰り出して一気に15頭をごぼう抜きにし、ヤマニンシュクルに半馬身差を付けて、見事に戴冠を果たしたのだった。ちなみにスイープトウショウが記録した上がり最速の時計33秒9は、次位のヤマニンシュクルのそれを0秒7も上回っていた。
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