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フィギュア

羽生結弦が自らに問う「生きていることの役割」 『notte stellata』で野村萬斎と描いた、鎮魂と再生の物語

沢田聡子

2025.03.10

野村萬斎とのコラボで羽生は「ボレロ」を演じた。写真:滝川敏之

野村萬斎とのコラボで羽生は「ボレロ」を演じた。写真:滝川敏之

 羽生は、囲み取材で『ボレロ』の制作過程を次のように振り返っている。

「この会場で本当に時間をかけて何回も何回も通しているうちに、萬斎さんの方から合わせて下さることもたくさんあり、僕自身も萬斎さんとどのような所作で合わせにいったらいいのかということをたくさん考えながら、出来上がった『ボレロ』だった」

 公演本番、野村は「ちょっと感極まりそうになりましたね」という。

「何か始まる時にね、一瞬霊感ではないですけど、何かこう皆さんの魂を感じるというか、思いがこう私に乗りかかってくるというか。そういうものを背負うのも、能・狂言に携わる者の使命のような気もして」
 
 舞台で舞う野村と黒い衣装のスケーター達が呼応するように動く中、白と金の衣装をまとった羽生が登場。羽生は狂言のすり足のような所作もみせて野村とシンクロしつつ滑り、最後は野村と同じタイミングでジャンプする。

 野村は、『ボレロ』について「最終的に、人間の一生が垣間見られる」と説明する。

「死からもう一回次の生に飛翔する、それが最後のジャンプにつながっているような意味合いを込めている」

『ボレロ』に対して、野村が震災後に込めた思い、そしてスケーター達が抱くリスペクトが融合し、プログラムは崇高な輝きを放った。会場を埋めた観客は、地鳴りのような喝采で演者を讃える。
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