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ラグビー

【ラグビーW杯をヒット記事で振り返る!】もう奇跡とは言わせない。「4年間の努力」が結実したアイルランド戦の勝利は必然のアップセットだ

吉田治良

2019.11.10

経験値の高い田中史朗の投入で攻撃にスピード感が生まれた。(C)GettyImages

経験値の高い田中史朗の投入で攻撃にスピード感が生まれた。(C)GettyImages

 後半に入っても無闇にパントキックを蹴らず、ボール保持率を高めていく日本。54分には同点を狙った田村のPGが枠を大きく逸れるが、悲観的なムードが漂うことはない。それから4分後、ついに逆転に成功する。

 ポイントになったのは、直前の56分に投入されたベテランSH、田中史朗だ。

「負けていたので、まずはスピードを上げて点を取ることを考えた」

 といういぶし銀が、敵陣右サイドで得たスクラムから素早くボールを引き出すと、これに呼応するように、CTB中村亮土、WTBレメキ・ロマノ・ラヴァが立て続けに縦に突っ込む。さらに球出しのテンポを上げる田中。中央から左へ振ると、中村、ラファエレとつなぎ、最後はこちらも49分から途中出場していたWTB福岡堅樹がゴール左隅に飛び込んだ。

 9月6日の南アフリカ戦(テストマッチ)で負傷し、開幕のロシア戦を欠場。アイルランド戦もメンバー外のはずだった福岡だが、先発予定のウィリアム・トゥポウがこの日の朝に左太もも裏を痛めたため、急きょベンチ入りし、スクランブル発進で大仕事をやってのけた。

 リーチ、田中、そして福岡。ベンチに信頼性の高いメンバーを揃えていた日本は、層の厚みも見せつけている。
 

 田村のコンバージョンも決まり、16-12とリードした後も、日本の高い集中力は途切れることがなかった。

「ティア1」のプライドを懸けて怒涛の反撃に出るアイルランドに、ゴール前まで押し込まれる時間帯が続く。それでも、「すぐに立ち上がり、すぐにラインに戻る守備ができた」とゲームキャプテンのFLピーター・ラブスカフニが胸を張ったように、「近場」を執拗に突いてくるアイルランドのアタックを、日本はダブルタックルの嵐で粘り強く跳ね返し続けた。

 逆に71分、田村のこの日3本目のPGで突き放すと、さらに77分には福岡がターンオーバーからおよそ50メートルを独走して、アイルランドを慌てさせる。逆転後のしたたかな戦いぶりは、まさしく「強者」のそれであっただろう。

 稲垣は冷静に分析する。

「アイルランドのアタックはシンプル。シンプルゆえに一度勢いをつけられると手強い。そこを80分間止め続けられるかが、今日のポイントだった。残り20分になって相手は足が止まったけど、日本は足を止めずにプレッシャーをかけ続けた。そこがひとつの勝因だと思う」
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