レメキは興奮気味に振り返る。
「フォワードが凄かった。あれだけ強いアイルランドのフォワードに対しても、ウチはめちゃくちゃ良かった。全員がどれだけきつくても立ち上がって、次の仕事を探していた」
そして、最後まで足が止まらなかったのは、どれだけきつくても立ち上がれたのは、「しんどいことをやり続けてきたから」だと、田中がフォローする。
「この4年間の努力がなければ、宮崎や網走でのきつい合宿がなければ、これほどの試合はできなかった。しんどいことをすれば勝てるということを体現できたと思う」
4年前、南アフリカを相手にジャイアントキリングを演じた直後、日本代表の面々は対戦相手へのリスペクトを忘れ、ピッチ上で無邪気に歓喜をぶちまけていた。
けれど、この夜は違った。喜びを爆発させたのは、試合終了のホイッスルを聞いたその一瞬だけだった。敗者の健闘を称え、そしてスタンドの熱狂を受け流すように、ゆっくりとグラウンドを一周する。いつの間にか桜の戦士たちは、「強者の身だしなみ」がすっかり板に付いていた。
「南アフリカに勝った4年前は、ここでお酒を飲んで喜んで、そして次のスコットランド戦に負けた。今回はみんなで(勝っても)もう飲まないという話をしている。しっかりとリカバリーして、次のサモア戦に備える。周りの雰囲気は変わるかもしれないが、周りではなく自分たちにフォーカスして、(メンタルを)コントロールすることを意識したい。今日、このチームに不可能はないということを、世界のトップが相手でも勝てるということを示せた。ただ、大切なのは、それをどう継続していくかだと思う」
そう語った田中は、最後にこう付け加えて笑うのだ。
「これでやっと、南アフリカ戦の話から解放される」
彼らは、我々が想像していたよりも、ずっとずっと先を歩いていた。
開幕2連勝でプールAの首位通過も見えてきたが、今の日本代表なら、史上初のベスト8進出はもちろん、もっと大きなこともやってのけてしまうかもしれない。
気が早いことは承知の上で言う。準々決勝が行なわれる東京で、あるいは準決勝の舞台となる横浜で、再び壮大な万歳三唱が鳴り響く可能性は十分にある。
もう、どんな強敵を倒そうと、誰もそれを「奇跡」とは呼ばないだろう。「必然のアップセット」は、これからも続く。
取材・文●吉田治良(スポーツライター)
「フォワードが凄かった。あれだけ強いアイルランドのフォワードに対しても、ウチはめちゃくちゃ良かった。全員がどれだけきつくても立ち上がって、次の仕事を探していた」
そして、最後まで足が止まらなかったのは、どれだけきつくても立ち上がれたのは、「しんどいことをやり続けてきたから」だと、田中がフォローする。
「この4年間の努力がなければ、宮崎や網走でのきつい合宿がなければ、これほどの試合はできなかった。しんどいことをすれば勝てるということを体現できたと思う」
4年前、南アフリカを相手にジャイアントキリングを演じた直後、日本代表の面々は対戦相手へのリスペクトを忘れ、ピッチ上で無邪気に歓喜をぶちまけていた。
けれど、この夜は違った。喜びを爆発させたのは、試合終了のホイッスルを聞いたその一瞬だけだった。敗者の健闘を称え、そしてスタンドの熱狂を受け流すように、ゆっくりとグラウンドを一周する。いつの間にか桜の戦士たちは、「強者の身だしなみ」がすっかり板に付いていた。
「南アフリカに勝った4年前は、ここでお酒を飲んで喜んで、そして次のスコットランド戦に負けた。今回はみんなで(勝っても)もう飲まないという話をしている。しっかりとリカバリーして、次のサモア戦に備える。周りの雰囲気は変わるかもしれないが、周りではなく自分たちにフォーカスして、(メンタルを)コントロールすることを意識したい。今日、このチームに不可能はないということを、世界のトップが相手でも勝てるということを示せた。ただ、大切なのは、それをどう継続していくかだと思う」
そう語った田中は、最後にこう付け加えて笑うのだ。
「これでやっと、南アフリカ戦の話から解放される」
彼らは、我々が想像していたよりも、ずっとずっと先を歩いていた。
開幕2連勝でプールAの首位通過も見えてきたが、今の日本代表なら、史上初のベスト8進出はもちろん、もっと大きなこともやってのけてしまうかもしれない。
気が早いことは承知の上で言う。準々決勝が行なわれる東京で、あるいは準決勝の舞台となる横浜で、再び壮大な万歳三唱が鳴り響く可能性は十分にある。
もう、どんな強敵を倒そうと、誰もそれを「奇跡」とは呼ばないだろう。「必然のアップセット」は、これからも続く。
取材・文●吉田治良(スポーツライター)