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ラグビー

【ラグビーW杯をヒット記事で振り返る!】もう奇跡とは言わせない。「4年間の努力」が結実したアイルランド戦の勝利は必然のアップセットだ

吉田治良

2019.11.10

もう勝利に歓喜するだけの日本ではない。相手へのリスペクト、そして観客への対応など、強者の振る舞いだった。写真:茂木あきら(THE DIGEST写真部)

もう勝利に歓喜するだけの日本ではない。相手へのリスペクト、そして観客への対応など、強者の振る舞いだった。写真:茂木あきら(THE DIGEST写真部)

 レメキは興奮気味に振り返る。

「フォワードが凄かった。あれだけ強いアイルランドのフォワードに対しても、ウチはめちゃくちゃ良かった。全員がどれだけきつくても立ち上がって、次の仕事を探していた」

 そして、最後まで足が止まらなかったのは、どれだけきつくても立ち上がれたのは、「しんどいことをやり続けてきたから」だと、田中がフォローする。

「この4年間の努力がなければ、宮崎や網走でのきつい合宿がなければ、これほどの試合はできなかった。しんどいことをすれば勝てるということを体現できたと思う」

 4年前、南アフリカを相手にジャイアントキリングを演じた直後、日本代表の面々は対戦相手へのリスペクトを忘れ、ピッチ上で無邪気に歓喜をぶちまけていた。

 けれど、この夜は違った。喜びを爆発させたのは、試合終了のホイッスルを聞いたその一瞬だけだった。敗者の健闘を称え、そしてスタンドの熱狂を受け流すように、ゆっくりとグラウンドを一周する。いつの間にか桜の戦士たちは、「強者の身だしなみ」がすっかり板に付いていた。
 
「南アフリカに勝った4年前は、ここでお酒を飲んで喜んで、そして次のスコットランド戦に負けた。今回はみんなで(勝っても)もう飲まないという話をしている。しっかりとリカバリーして、次のサモア戦に備える。周りの雰囲気は変わるかもしれないが、周りではなく自分たちにフォーカスして、(メンタルを)コントロールすることを意識したい。今日、このチームに不可能はないということを、世界のトップが相手でも勝てるということを示せた。ただ、大切なのは、それをどう継続していくかだと思う」

 そう語った田中は、最後にこう付け加えて笑うのだ。

「これでやっと、南アフリカ戦の話から解放される」

 彼らは、我々が想像していたよりも、ずっとずっと先を歩いていた。

 開幕2連勝でプールAの首位通過も見えてきたが、今の日本代表なら、史上初のベスト8進出はもちろん、もっと大きなこともやってのけてしまうかもしれない。

 気が早いことは承知の上で言う。準々決勝が行なわれる東京で、あるいは準決勝の舞台となる横浜で、再び壮大な万歳三唱が鳴り響く可能性は十分にある。

 もう、どんな強敵を倒そうと、誰もそれを「奇跡」とは呼ばないだろう。「必然のアップセット」は、これからも続く。

取材・文●吉田治良(スポーツライター)
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