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ラグビー

【ラグビーW杯をヒット記事で振り返る!】痺れるエンディングを導き出したサモアの敢闘精神。それを上回った日本の凄み

吉田治良

2019.11.11

最後に魅せたのは松島。ボーナスポイントを獲得する会心のトライを決めた。写真:茂木あきら(THE DIGEST写真部)

最後に魅せたのは松島。ボーナスポイントを獲得する会心のトライを決めた。写真:茂木あきら(THE DIGEST写真部)

 72分、ラインアウトからのピック&ゴーで、ついにサモアのCTBヘンリー・タエフに堅陣を破られるが、しかし、ここからのラスト約10分で見せた一気呵成に、現在のジャパンの充実ぶりと凄みが凝縮されてもいただろう。

 右の頬を打たれて、左の頬を差し出すような慈悲深さなどない。わずか3分後には、お返しにとばかりに相手の頬を痛烈に打ち返す。FW、BKともに途中出場の選手たちが一体となって敵陣に襲い掛かると、最後は56分から投入されていたWTB福岡堅樹が右サイドを抜け出してインゴールに飛び込んだのだ。

 あと、ひとつ──。

「4トライを取らないと、勝つだけでは意味がないと思っていた」

 田村の強い想いが、チーム全体に乗り移る。78分、WTBレメキ・ロマノ・ラヴァひとりを残して一丸となってプッシュした“14人モール”が水際で食い止められても、誰もあきらめたりはしない。

「最後のスクラムは、後ろに一番押しが強い(ヘル)ウヴェがいたので、絶対にスクラムトライが取れると思った」
 
 堀江が確信を持って押し続けた、アディショナルタイムの“魂のラストスクラム”。ここから姫野が左へ持ち出すと、流に代わってSHに入っていた田中史朗が左へ素早くつなぎ、仕上げはやはり、千両役者の松島だった。ワンフェイントで相手ディフェンスを抜き去り、タックルを浴びながらも左隅にグラウンディングしたのだ。

 痺れるようなエンディングを導き出したのは、こちらもボーナスポイント(7点差以内の敗戦による1ポイント)の獲得を目指し、あえてラストプレーでスクラムを選択したサモアの敢闘精神でもあるだろう。「我々のファンは500人くらいしかいなかったと思う」(スティーブ・ジャクソンHC)という完全アウェーの中で、彼らが見せたファイティングスピリッツは感動的ですらあった。

 だが、それ以上に際立ったのが、日本の凄み、したたかさ、そして懐の深さだった。相手に応じて臨機応変にスタイルを変え、リザーブ選手が揃ってインパクトをもたらす。ボーナスポイントを狙って、確実に取り切ってしまったのは、チームとしての総合力の証に他ならない。

 破竹の3連勝。これでスコットランドとのプール最終戦は、たとえ敗れたとしても条件次第ではベスト8に進出できる。しかし、「自信」という鎧をさらに分厚くした今のジャパンなら、きっとスコットランドも飲み込んでしまうに違いない。

 彼らなら、もっともっと遠くにまで行ける──。

 人間というのは、つくづく欲深い生き物である。

取材・文●吉田治良(スポーツライター)
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