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忘れない3.11から10年――東京五輪メダルを狙う張本智和は「チョレイ封じ」対応でスタイル変更も視野に

佐藤俊

2021.03.11

 コロナ禍の中での国際大会などは、今後も声について自粛が求められることが予想される。その対策について張本は何か考えているのだろうか。

「今、Tリーグに参戦しているのですが、Tリーグは声について特にルールはできていないので、気持ちよくやれています。ただ、国際大会は全日本みたいな感じ(自粛)になりそうので、そうなったらどうしようという怖さはあります。Tリーグが終わったら国際大会仕様に自分のプレースタイルを変えていかないといけないかなって今は考えています」

 Tリーグでは、張本が語るように声について規制や注意もなく、伸び伸びとプレーしており、後半戦は16マッチに出場し15勝と9割を超える勝率で最多勝でMVPに輝いた。声を出していることでリズムが生まれ、自分のペースで戦えたようだ。

「リズムは大事ですね。ただ、リズムや流れは一瞬にして変わります。例えば、リズムが悪い時、得点を取れない時はとことん失点してしまいますし、その逆もあります。リズムがいい時は、ばんばんサーブを出して、レシーブに入ってというのを意識していますが、逆にうまく乗れない時はコートの周りを2、3周歩いてリズムを整えたり、サーブの時、なかなか出さずに早くやりたい相手をイライラさせるようにしています」

 リズムよく戦えていると集中力が高まり、より良いパフォーマンスを発揮できる。これは張本に限らず、アスリートはみなそうだろう。

 集中力を高めるためのルーティンもある。張本は大会会場までのバス移動中は音楽を聴き、会場に入ってから試合の動画を見て、ウォーミングアップする中で気持ちを集中させていく。気持ちを極限にまで集中させていくと、よく選手がいう「ZONE」の境地に至る。

 張本もその境地に至った試合があるという。

 2018年、ITTFワールドツアーグランドファイナルで張本は準決勝で世界ランキング6位のウーゴ・カルデラ(ブラジル)を4-0のストレートで撃破した。つづく決勝で中国の林高遠を4-1で破り、15歳172日という世界最年少で優勝を勝ち取った試合だ。

「決勝の林選手との試合は、ゾーンに入りました。その時は、どんなサーブも入る気がしたし、相手の打つコースもここら辺かなって読めたので、そこはいつもと違うなって思いました。ただ、普段はなかなかゾーンに入ることがなくて、年に1回あるかどうかって感じですね」
 
 集中でいえば、今、話題の「鬼滅の刃」から「全集中」という言葉がアスリートにもよく使われている。張本も映画「鬼滅の刃 無限列車編」を見たという。

「全集中は、現実は難しいですね(笑)。例えば連戦で、この試合だけに全集中してしまうと次が疲れてしまうので、僕はバランス、ペース配分が大事かなと思います。全集中は最近、よく耳にするので、逆に自分はあまり言わないようにしています。乗っかり過ぎないようにしている感じですね(笑)」

 東京五輪の先行きは、コロナ禍の影響でまだ不透明だ。

 だが、その舞台に立った時は、「全集中」で「ZONE」に入ってライバルたちをなぎ倒してほしい。日本卓球界の「柱」としての戦いを見せ、頂点に立てば、9歳の時の張本少年が感動し、憧れた田中将大のような存在になれるはずだ。

取材・文●佐藤俊(スポーツライター)
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