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【名馬列伝】『みじかくも美しく燃え』たサイレンススズカ。“伝説“から“悲劇“へと急転した、鮮烈すぎる2年弱の競争馬生

三好達彦

2021.05.23

 1998年11月1日、快晴の東京競馬場。メインレースは天皇賞(秋)。毎日王冠で強豪2騎、エルコンドルパサー、グラスワンダーを圧倒的なスピードで倒したサイレンススズカに恐れをなしてか、出走を回避する馬が続出。天皇賞としては異例の12頭立てという少頭数となる。単勝オッズ1.2倍という極めて高い支持を叩き出したファンの興味は、彼の勝ち負けにはすでになく、どれだけ痛快な勝ち方をしてくれるのか、この一点に絞られていたと言ってよい。

 1番枠から飛び出したサイレンススズカはすぐさま先頭を奪うと、後続を気にせずぐんぐんとスピードを上げる。向正面に入ったころは数馬身ぐらいだった差は、第3コーナーに入る回る時点では10馬身以上に広がっていた。

 ファンの歓声が徐々にボルテージを上げ、いよいよ最終コーナーに入ろうとしたその瞬間だった。

 サイレンススズカは突然失速し、武豊騎手を乗せたまま不自然な歩様で外ラチへ方向へと退避していく。

 彼の身に大きな災厄が降りかかったことは誰の目にも明らかだった。
 
 ざわつくスタンドの前で優勝争いは繰り広げられていたが、多くのファンの目は第4コーナーの方向に吸いつけられたままだった。

 のちに分かったサイレンススズカの怪我は右前肢粉砕骨折。あまりにも救いのない苛烈な症状だった。

 ファンの夢を乗せて疾走するスピードスターの短い生涯は悲劇的な形で突如、幕を閉じた。

『みじかくも美しく燃え』という、悲恋を描いた映画がある。サイレンススズカの2年弱の競走生活を思い出すとき、いつもこの映画のタイトルが頭に浮かぶ。

 ”たられば”を語るのは美しくない。

 サイレンススズカは確かに美しくターフを駆け抜けた。ファンはそんな彼を愛した。これだけで十分ではないか、と思う。

文●三好達彦

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