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【名馬列伝】忘れ得ぬ「ゴルシ伝説」――我が道を貫いた“異能の天才“ゴールドシップが今でも愛される理由

三好達彦

2021.05.01

圧倒的な実力と気性の粗さで強烈なインパクトを残したゴールドシップは、いまだファンの心を鷲掴みにしている。写真:産経新聞社

圧倒的な実力と気性の粗さで強烈なインパクトを残したゴールドシップは、いまだファンの心を鷲掴みにしている。写真:産経新聞社

「愛すべき異能の天才」
 ゴールドシップの現役時代を思うとき、そんなフレーズが浮かんでくる。

 ダッシュが鈍く、馬群に取り付くまでに時間がかかる。大敗したあと、いきなり激走する。気性が難しく、いつでもコンスタントに走るわけではない。GⅠレース6勝を含む重賞通算11勝を挙げているように、数字を見るだけなら名馬の呼び名に相応しいものなのだが、その足跡を細かく見ていくと決して普通の名馬のそれではない。戦績の浮き沈みの激しさや、気性の激しさゆえに引き起こしたユニークなエピソードの数々に加え、芦毛馬に特有のルックスの愛らしさも含めて人気を集めたのがゴールドシップだった。

 ゴールドシップの父ステイゴールドは、宝塚記念、有馬記念などを制したドリームジャーニー、三冠馬となったオルフェーヴルを出して急激に種牡馬としての評価を高めていた。
 
 しかし、レース後に騎手を振り落としたり、レースの途中で逸走したりと、オルフェーヴルは気性の難しい馬だった。それと同じように、兄弟のゴールドシップも歳を重ねるごとに気性の激しさを表に出すようになっていく。突如として後肢で立ち上がるのは日常茶飯事で、調教時に乗り役を落としたり、スタッフのシャツを噛んで破いたり、気に入らない馬を威嚇して厩務員を困らせるなどの蛮行もしばしば。かと思えば、急に立ち止まり、鞍上が促しても動こうとしなかったり……。気ままさ、わがままさではオルフェーヴルに負けず劣らずの存在だった。

 これらはファンから”ゴルシ(ファンの間で使われていた愛称)の奇行”と呼ばれ、笑いを誘うエピソードとして取り上げられることが多く、彼が愛される一因にもなっている。しかし一方で、横山典弘騎手が「頭が良かったから、分かってやっていた」と述べたように、意図的な示威行動だと評する関係者も少なくない。

 こうした気性の掴みづらさは、現役時代、ゴール前の競り合いで並走する他馬に噛みつこうとしたエピソードで知られる祖父(父の父)のサンデーサイレンス、直線で急に斜行して1位入線しながら失格するなど、”癖馬(くせうま)”として有名だった父ステイゴールドという、父系に流れる気性の激しさの成せるところだというのが大方の見方。気性の激しさが勝負にいっての強さに結びつくケースも多いが、それはひとつ間違えば制御不能の狂気に転じる「諸刃の剣」ともなる。
 
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