一方、ブラン監督の代表候補選考に“異議”を唱えるのは、元男子代表監督の植田辰哉氏(大阪商業大学公共学部教授)だ。「植田監督なら柳田を選ぶか」と聞くと、「絶対に入れます」と即答した。
まず挙げたのが、大一番での勝負強さ。柳田は、4月9日のファイナル3のパナソニック戦で、アタックで16得点、サーブでも2得点を挙げてファイナル進出に貢献した。「プレッシャーのかかる試合で、どういうプレーをするか楽しみにしていたが、非常に素晴らしい活躍をした。こういう選手が国際大会では必要になる」と植田氏は話す。
またチームを言葉と背中で引っ張る柳田について、「僕の監督時代も、越川優や石島雄介ら、いろんな選手がいろんな意見を持っていた。勝ちたいから、選手はいろんな意見を言ってくる。自分の意見を伝えられるということは素晴らしい。あの選手は、代表に必要な選手です」と、自身の代表監督時代の経験に重ねて、チームを勝たせてくれる選手の存在の大きさを強調した。
「(国際レベルに達していないとは)それは言っちゃダメでしょ」という植田さんだが、自身も選考で逡巡したことがあるという。2008年北京五輪で、日本男子として16年ぶりの出場を果たしたが、代表候補に国内リーグでブロックのうまい選手を選ぶかどうか迷い、結局、選考しなかった。「Vリーグでは結果を出していたが、日本代表にはどうだろうか。僕のなかに葛藤はあった」と打ち明け、ブラン監督の考えにも理解を示す。ただ、その選手に越川や石島のようにチームを変えるんだという強い思いがあれば、結果は違ったのかもしれない。
植田さんが柳田を重要視するのは、パリ五輪への出場権獲得方法が従来とは変わったことが大きい。これまでは世界選手権や大陸予選などで出場権を獲得することが出来たが、出場12カ国を今回から開催国(フランス)を除く世界ランキング上位24カ国が、8カ国ずつ3組に分かれて五輪予選1回総当たり戦を行ない、各組上位2カ国が出場権6枠を獲得。また、2024年6月のネーションズリーグ予選ラウンド終了時点の世界ランキング上位5カ国が出場権5枠(開催国、五輪予選での出場権獲得国を除く)を得る方式に変更された。
国際大会ごとに世界ランキングが変動し、最終的に世界ランキングが五輪出場権に直結することになった。それだけに、大会ごとの短期決戦が重要になってくる。プレッシャーのかかる試合で、どれだけのパフォーマンスを発揮することが出来るのか。植田さんが、「勝負強い柳田」をチームに求める大きな理由だ。
4月17日のV1リーグファイナルラウンド(千葉ポートアリーナ)で、サントリーは2年連続9度目の優勝を果たした。ベスト6に輝いた柳田は、「黒鷲旗全日本男女選抜大会、アジアクラブ選手権まで走り続けなければいけない」と、タイトル獲得を目指しチームとしての更なる成長を誓っていた。
「過程がいかによくても、自分が求めている結果が出せなかったら、それを改善することにフォーカスしなければいけない。あくまでベクトルは自分に向け続けていかなければならない」とは、昨年8月のインタビューでの柳田の答えだ。
自身の置かれている状況を俯瞰し、冷静かつ厳しく自己評価する姿勢を貫き、「柳田将洋」は進化し続ける。
文●北野正樹(フリーライター)
【プロフィール】きたの・まさき/1955年生まれ。2020年11月まで一般紙でプロ野球や高校野球、バレーボールなどを担当。南海が球団譲渡を決断する「譲渡3条件」や、柳田将洋のサントリー復帰などを先行報道した。関西運動記者クラブ会友。
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まず挙げたのが、大一番での勝負強さ。柳田は、4月9日のファイナル3のパナソニック戦で、アタックで16得点、サーブでも2得点を挙げてファイナル進出に貢献した。「プレッシャーのかかる試合で、どういうプレーをするか楽しみにしていたが、非常に素晴らしい活躍をした。こういう選手が国際大会では必要になる」と植田氏は話す。
またチームを言葉と背中で引っ張る柳田について、「僕の監督時代も、越川優や石島雄介ら、いろんな選手がいろんな意見を持っていた。勝ちたいから、選手はいろんな意見を言ってくる。自分の意見を伝えられるということは素晴らしい。あの選手は、代表に必要な選手です」と、自身の代表監督時代の経験に重ねて、チームを勝たせてくれる選手の存在の大きさを強調した。
「(国際レベルに達していないとは)それは言っちゃダメでしょ」という植田さんだが、自身も選考で逡巡したことがあるという。2008年北京五輪で、日本男子として16年ぶりの出場を果たしたが、代表候補に国内リーグでブロックのうまい選手を選ぶかどうか迷い、結局、選考しなかった。「Vリーグでは結果を出していたが、日本代表にはどうだろうか。僕のなかに葛藤はあった」と打ち明け、ブラン監督の考えにも理解を示す。ただ、その選手に越川や石島のようにチームを変えるんだという強い思いがあれば、結果は違ったのかもしれない。
植田さんが柳田を重要視するのは、パリ五輪への出場権獲得方法が従来とは変わったことが大きい。これまでは世界選手権や大陸予選などで出場権を獲得することが出来たが、出場12カ国を今回から開催国(フランス)を除く世界ランキング上位24カ国が、8カ国ずつ3組に分かれて五輪予選1回総当たり戦を行ない、各組上位2カ国が出場権6枠を獲得。また、2024年6月のネーションズリーグ予選ラウンド終了時点の世界ランキング上位5カ国が出場権5枠(開催国、五輪予選での出場権獲得国を除く)を得る方式に変更された。
国際大会ごとに世界ランキングが変動し、最終的に世界ランキングが五輪出場権に直結することになった。それだけに、大会ごとの短期決戦が重要になってくる。プレッシャーのかかる試合で、どれだけのパフォーマンスを発揮することが出来るのか。植田さんが、「勝負強い柳田」をチームに求める大きな理由だ。
4月17日のV1リーグファイナルラウンド(千葉ポートアリーナ)で、サントリーは2年連続9度目の優勝を果たした。ベスト6に輝いた柳田は、「黒鷲旗全日本男女選抜大会、アジアクラブ選手権まで走り続けなければいけない」と、タイトル獲得を目指しチームとしての更なる成長を誓っていた。
「過程がいかによくても、自分が求めている結果が出せなかったら、それを改善することにフォーカスしなければいけない。あくまでベクトルは自分に向け続けていかなければならない」とは、昨年8月のインタビューでの柳田の答えだ。
自身の置かれている状況を俯瞰し、冷静かつ厳しく自己評価する姿勢を貫き、「柳田将洋」は進化し続ける。
文●北野正樹(フリーライター)
【プロフィール】きたの・まさき/1955年生まれ。2020年11月まで一般紙でプロ野球や高校野球、バレーボールなどを担当。南海が球団譲渡を決断する「譲渡3条件」や、柳田将洋のサントリー復帰などを先行報道した。関西運動記者クラブ会友。
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