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バレーボール

「絶対真似をしないで」負傷の古賀紗理那が悲痛な訴え。“美談”で終わらない現実問題に迫る

THE DIGEST編集部

2021.10.23

五輪の初戦としたケニア戦で、不運にもジャンプの着地で足首を捻挫した古賀。(C)Getty Images

五輪の初戦としたケニア戦で、不運にもジャンプの着地で足首を捻挫した古賀。(C)Getty Images

 10月15日、バレーボールの国内最高峰リーグ、Vリーグ男女1部リーグが開幕した。開幕戦から、東京五輪にも出場した石川真佑(東レ)や小幡真子(JT)といった面々が活躍を見せるなか、3年後に迫るパリ大会では女子日本代表の柱として活躍が期待される古賀紗理那(NEC)はベンチスタートとなった。

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 東京五輪からコンディションが整わず、開幕を欠場した選手は他にもいるが、古賀の場合は初戦のケニア戦で負傷した右足首の影響であることは明確で、先だって行なわれた開幕に向けた記者会見でも「まだ(右足首は)万全ではない」と述べている。

 そもそもケガが重症だったことも一因ではあるが、復帰を急ぐあまり治療経過が万全ではなかったことも大きい。古賀にとっても、日本代表にとっても絶対に負けられない大一番であった韓国戦で急遽復帰し、攻守においてケガを感じさせない頼もしい姿を見せたが、その代償はあまりに大きかったのは否めない。

 トップ選手のみならず、小学生や中学生、高校、大学などカテゴリーは異なれど、ジャンプや移動を伴う瞬時の切り返しが求められるバレーボール選手にとって捻挫はいわば“身近な”ケガではある。

 実際に試合中足をひねった選手や、前日の試合で負傷した選手が足首をガチガチにテーピングで固め、試合に出場するケースは少なくない。全国大会ともなれば「ケガを押して出場」が美談として捉えられがちだが、ケガを押して出場した結果、別の箇所に違うケガをしたり、現役選手としての期間が短くなることもある。だが残念ながら美談は伝えられても、そのリスクを伴う現実を伝えるメディアは圧倒的に少ない。

 古賀自身も大会後のインタビューで「五輪だったから無理にでも復帰した」と述べている通り、これが正しいとは思わず、むしろ「育成年代には絶対真似をしないでほしい」と訴える。何より古賀自身、五輪の閉幕から2か月以上が過ぎた今も万全な状態で試合に出場できない現実を見れば、その言葉に重みが加わるのではないだろうか。
 
 木村沙織の後継者として高校時代から期待を集めた古賀だが、2016年のリオデジャネイロ五輪は直前でメンバーから落選した。その悔しさを晴らすために、東京五輪はリベンジの機会でもあり、昨シーズンNECで見せたプレーや存在感は圧倒的だった。

 そんな矢先のケガに誰より無念だったのは古賀自身であり、古賀が担う役割を考えれば女子日本代表にとっても大きな痛手であったのは間違いなく、事実、古賀を欠いたセルビア、ブラジル戦は相手の力をはね返すことができないまま敗れた。

 負けられない状況を危惧し、絶対に戻るという一心でコートに立ち、戦った古賀は責められない。だが、リーグでの復帰時期も未だ定かでなく、復帰してもケアやリハビリも並行する現状に変わりはなく、まだこれからも続くであろう将来、何より3年後に迫るパリ五輪でも活躍が期待される存在であることを踏まえれば、決して楽観できるものではない。むしろ五輪での捻挫が引き金となり、別のケガやさらに大きなアクシデントにつながらないようにと祈るしかない。

 いずれにせよVリーグは開幕し、優勝をかけた戦いは約半年、4月半ばまで続く。その間、古賀がいつ復帰を果たしどんなパフォーマンスを見せるかに期待が集まるのは確かだが、それよりもまず、今だけでなくこの先を見据え、無理だけはしないでほしいと願うばかりだ。

構成●THE DIGEST編集部

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