ゲートがいまひとつだったタマモクロスはほぼ最後方からのレースとなり、一方のオグリキャップは中団の好位置をキープした。行きっぷりはオグリキャップの方が断然良かったが、タマモクロスも第３コーナーから馬群の外を通って一気に先行集団に加わり、オグリキャップに並びかけて運命の直線を迎えた。

　この２頭が馬体を併せて競り合うのは初めてのことだったため、声援で場内の中継放送がかき消されるほどにファンが熱狂するなか、追い上げる際に脚を使ったタマモクロスが最後に力尽き、オグリキャップは半馬身差でついに一つ年上のスーパーホースを降し、自身はＧⅠホースの仲間入りを果たした。

　敗れはしたが、体調が万全ではないと報道されるなか、出遅れて後方からの競馬を強いられるも最後までオグリキャップを苦しめたタマモクロスにも盛んな拍手と声援が送られた。　また、翌年の１月７日に昭和天皇が崩御したため、このレースは「昭和最後の名勝負」と言われるようにもなった。
  　タマモクロスは1988年度のＪＲＡ賞で年度代表馬に選出され、1989年１月15日に京都競馬場で引退式を挙行した後、新しい住処となる北海道・静内町のアロースタッドへ旅立った。

　種牡馬としてはカネツクロスなど重賞勝ち馬を数頭送り出すに留まった。しかし、現役時代にタマモクロスが描いた急激な上昇曲線は他に比肩するものがないほど激烈であり、同時に多くのファンを痺れさせるに足る強力な魅力を発していた。

文●三好達彦

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