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フィギュア

世界王者の宇野昌磨ですら「相当緊張した」自己ベスト連発の男子シングル。好演技の相乗効果が生んだ”過去最高レベル”の激闘譜【フィギュア全日本選手権】

湯川泰佑輝(THE DIGEST編集部)

2023.12.28

宇野は男子歴代2位タイとなる6度目の全日本王者に輝いた。写真:金子拓弥(THE DIGEST写真部)

宇野は男子歴代2位タイとなる6度目の全日本王者に輝いた。写真:金子拓弥(THE DIGEST写真部)

 会場の熱気は最高潮のなか、大トリには昨年の全日本王者が氷上に立った。

 ショートでは唯一100点台をマークしていた宇野は、最終滑走でも落ち着いた演技を披露した。冒頭の4回転ループは着氷が少し乱れて回転不足をとられたが、4回転フリップ、トリプルアクセルからの連続ジャンプなどを決める。基礎点が1.1倍になる後半は4回転+2回転の連続トウループを完璧に降り、単発の4回転トウループを着氷。最後の3回転サルコウも綺麗な流れで、プレッシャーがかかる中でミスを最小限に抑える貫禄のスケーティングを見せた。

 フリートップは鍵山に譲ったものの、合計得点で5.94点の差を守った宇野が6度目の頂点に立ち、王者としての底力を見せつけた。

 決して容易な優勝ではなかった。直前に滑った山本を含め、宇野は後輩らの演技について、「みんな本当に素晴らしい演技をしていた」と称賛。「草太くんはずっと一緒に練習していたので、やっぱり感情が余計に入る素晴らしい演技でしたし、『その次に滑る僕、大丈夫か』って思いました」と苦笑いを浮かべながら、大きな重圧があったと明かす。

 連鎖するかのようなパーフェクト演技が続くなか、大きなミスが命取りになる中で掴んだ優勝はより価値がある。宇野は自身のパフォーマンスについて「僕は最高の演技とはいきませんでしたけど、本当にまさにベテランなんだなと。こういう中でも、自分の状態が別に良くなくても、ちゃんとやらなきゃいけないことを的確に見極めてやることができたなと思います」と強調。世界トップと第一線で戦ってきたキャリアの積み重ねがつながった結果だと分析した。
 
 翌日の女子シングルで大会3連覇を飾ることになる坂本は、好演技が続いた男子の戦いを目の当たりにして胸を打たれたようで、「第3グループから本当にめちゃくちゃ熱かった」と興奮を隠せなかった。

 全日本女王は最終グループに登場したスケーター全員を称えながら、「表彰台を倍くらい増やせないかなという感じ。それぐらい本当に神がかった試合で、誰が表彰台乗っても文句ないぐらい激戦で、すごい熱い戦いだったので。見ててすごいスケートって面白いなと感じました」と評すほど、手に汗を握ったという。

 この舞台に進出した選手はみな「全日本選手権が一番緊張する」と答えるのが少なくない。それほど国内のスケーターにとっては憧れであり、特別な場所だ。残念ながら、全日本選手権は国際スケート連盟非公認のため、今大会の得点はすべて「参考記録」扱いとなる。

 だがこの日、ビッグハットに詰めかけた3707人は過去最高レベルといっても過言ではないほど、ハイレベルで至極なフィギュアスケートを観戦できたのではないだろうか。そう思えるほど、記憶に残る男子シングルの激闘だった。

取材・文●湯川泰佑輝(THE DIGEST編集部)

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