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【名馬列伝】“幻の三冠馬”フジキセキ。4戦4勝でターフ去るも、父サンデーサイレンス繁栄の一端を担った太く短い生涯

三好達彦

2024.06.09

 翌春の始動戦は、皐月賞トライアルの弥生賞(GⅡ.中山・芝2000m)。前日の雨で重となったが、スタートしてすぐさま2番手に付けると、直線では早めに先頭に立ってホッカイルソーに2馬身半差を付けて完勝。初めての道悪を気にすることなく、というよりも道悪で強さを余計に際立たせる結果となり、「一冠目は堅い」と誰しもが感じた。

 しかし、現役生活の終わりは突然訪れた。

 3月24日の朝、スタッフが馬房を見ると脚に不具合を生じたフジキセキがいた。馬房の羽目板が壊れており、どうやら板を蹴破った際に脚を痛めたようだった。すぐに検査をすると、左前肢に全治まで1年以上を要する重傷の屈腱炎を発症していることが判明。関係者が協議した結果、従前の能力を取り戻すのは難しいとの判断が下され、種牡馬入りすることが発表された。フジキセキは“幻のクラシックホース”として、現役生活に幕を閉じた。

 現役を引退したフジキセキは、父のサンデーサイレンスも繋養されている社台スタリオンステーションにスタッドインし、早速その年から種牡馬生活に入った。人気が沸騰していたサンデーサイレンスを付けられなかった生産者の人気を集め、半分ほどのシーズンしか活動できなかったのにもかかわらず、100頭以上に種付けをした。

 産駒の活躍に関してはややスロースターターだったが、2年目の産駒からスプリングステークス(GⅡ)を勝つダイタクリーヴァが出るなど、徐々に重賞で活躍する仔が目立つようになる。そんななか、豪州から声がかかる。北半球で半年、南半球で半年と、移動しながら供用される「シャトル種牡馬」になる。これは日本初ということで、大いに耳目を集めた。
 
 その後、種牡馬として本領発揮し出してからの産駒の活躍は目覚ましかった。ジャパンカップダート(05、08年)などGⅠ・JpnⅠを7勝したカネヒキリをはじめ、ファイングレイン(高松宮記念)、コイウタ(ヴィクトリアマイル)、エイジアンウインズ(ヴィクトリアマイル)、ダノンシャンティ(NHKマイルカップ)、サダムパテック(マイルチャンピオンシップ)、ストレイトガール(ヴィクトリアマイル2勝、スプリンターズステークス)と続き、2011年生まれの世代からはついにクラシックホース、皐月賞を制するイスラボニータを出した。

 また、シャトル種牡馬として渡った豪州産の仔からも、ドバイシーマクラシックなどを勝ったサンクラシーク(Sun Classique)が出たほか、日本に逆輸入されて高松宮記念を連覇するキンシャサノキセキも送り出した。

 年間200頭以上に種付けする人気種牡馬として活躍したフジキセキは、2011年からは加齢の影響が顕著になったことから種牡馬生活からも退いて功労馬として余生を送り、2015年12月に頚椎損傷のため死亡した。23歳だった。

 競走馬としては、「どこまで強かったのか」という謎を残して現役を引退し、その真価を種牡馬として証明していったフジキセキ。サンデーサイレンスの初年度産駒として、父の名を大きく高めた功労馬としての評価も忘れてはならない。(文中敬称略)

文●三好達彦

【動画】わずか4戦の現役生活も鮮明なインパクトを放った“幻の三冠馬”フジキセキの軌跡
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