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競馬

【名馬列伝】名門メジロ牧場の系譜を継ぐ“稀有な優駿“モーリス。日本で育まれた血の結晶が世界を制す

三好達彦

2025.01.26

 帰国初戦でモーリスは、連覇を狙った安田記念ではロゴタイプの逃げを捉え切れず2着に敗れ、オーナーのプラン通りに中距離路線への挑戦となった札幌記念(GⅡ)でも逃げたネオリアリズムの2着となった。そのあとはマイル路線には戻らず、秋の天皇賞(GⅠ)へ進み、12月の香港カップ(GⅠ、芝2000m)をラストランとすることがオーナー側から発表された。

 迎えた天皇賞。1番人気に推されたモーリスは、逃げたエイシンヒカリを前に見ながら5~6番手を追走。直線坂下で鞍上のムーアに追い出されると馬場の外目から一気に先頭へ躍り出て、追い込んできたリアルスティールに1馬身半差を付けて快勝した。悍性の強さからマイル戦を中心に使われてきたモーリスだが、5歳の充実期を迎えて気性面も成長。血統的背景を生かして中距離路線でも花を咲かせたのだった。

 そしてラストランとなる香港カップ。ここでもライアン・ムーアに手綱を託したモーリスに、もう敵はいなかった。大逃げを打つエイシンヒカリをよそに中団の後方を追走すると、直線では最内を通り豪脚を爆発させて突き抜けると、香港のシークレットウェポン(Secret Weapon)に3馬身差を付けて楽勝。自ら引退の花道を飾ったのだった。
 
 2016年度のJRA賞では、最優秀4歳以上牡馬にキタサンブラックが、最優秀短距離馬にはミッキーアイルが選ばれたため、モーリスには年度代表馬に選出される資格を失った。そのため、2つのGⅠレースで圧倒的な勝利を収めたモーリスには、別に定めた特別賞が贈られた。

 2017年から社台スタリオンステーションで種牡馬入りしたモーリスは、初年度から日本で265頭に種付けする大人気を集めたほか、シャトル種牡馬としての渡航先であるオーストラリアでも121頭に配合され、年間を通してみると実に386頭もの繁殖牝馬と交配された。その後も、コロナウイルスの世界的蔓延による影響で渡航が中止された2020年以外はシャトル供用され、毎年、日豪あわせて300頭前後への種付けをこなしている。

 この人気は産駒の優れた成績に裏打ちされており、日本ではピクシーナイト(スプリンターズステークス)、ジェラルディーナ(エリザベス女王杯)、ジャックドール(大阪杯)、アドマイヤズーム(朝日杯フューチュリティステークス)とGⅠホース4頭をはじめ、JRA重賞の勝ち馬を計16頭も出している。また、豪州でもオーストラリアンダービーなどG1を3勝したヒトツ(Hitotsu)などの活躍馬を送り出しており、人気は年を追うごとに高まっている。

 社台グループに源流を見るデヴオーニア牝系の血脈は、メジロ牧場を通じて生き残り、いくつもの偶然を経てモーリスへと流れ込んだ。その血はいま日本のみならず、南半球へと広がっている。競馬の夢と不思議を体現しているのがモーリスという稀有な駿馬なのである。

 だから、競馬は面白い。

文●三好達彦

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