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競馬

【名馬列伝】“マルゼンスキー超え”を果たしたリンドシェーバー 「マル外ブーム」の着火剤となった90年代の超快速馬

三好達彦

2025.07.21

 このころ、リンドシェーバーは話題の主となる。なんと3歳にして総額9億円もの種牡馬シンジケート(種付権を株に分割して結成される法人)が組まれたからである。

 これには二つの理由があった。

 ひとつは、当時はまだクラシック競走や天皇賞が外国産馬に開放されておらず、出走できるGⅠレースが非常に限られていたこと。そのため朝日杯3歳ステークスを驚異的な時計で制し、JRA賞も受賞して最上級の評価を受けていたリンドシェーバーは、競走馬として獲得が期待される賞金よりも、種牡馬としての資産価値が上回っていたのである。

 またリンドシェーバーの父アリダーが1990年11月に死亡したため、すでに日本で実績を残した彼の血統的価値が格段に高まったことも理由のひとつ。英三冠馬ニジンスキー(Nijinsky)の直仔であるマルゼンスキーが種牡馬として成功を収めていたことも、そのムーブを後押ししたと言えるだろう。
 
 リンドシェーバーが3歳初戦に選んだのはオープンのヒヤシンスステークス(東京・芝1400m)。ここをほぼ”持ったまま”で2着に4馬身もの差を付けて圧勝すると、外国産馬にも出走が許されていた皐月賞トライアルの弥生賞(GⅡ、中山・芝2000m)へと駒を進める。この一戦には関西のエース・イブキマイカグラが出走するため、ファンは大いに盛り上がった。

 レースは激闘になった。直線で先に抜け出したリンドシェーバーに、後方から猛追したイブキマイカグラが並びかけ、2頭が馬体を併せて熾烈な叩き合いとなったが、イブキマイカグラがクビ差でリンドシェーバーを抑えて優勝。リンドシェーバーは生涯2度目の敗戦となった。

 その後、マイル・短距離路線に舵を切る予定だったリンドシェーバーだが、調教中の骨折を発症。そのまま11月に引退、種牡馬入りが陣営から発表され、わずか6戦で現役生活に幕を閉じた。

 その後、日本で活躍する外国産馬は目に見えて増加した。1990年代の前半だけでも、エルウェーウィン(1992年の朝日杯3歳ステークス)、シンコウラブリイ(1993年のマイルチャンピオンシップ)、ヒシアマゾン(1993年の阪神3歳牝馬ステークス、1994年のエリザベス女王杯)、ヤマニンパラダイス(1994年の阪神3歳牝馬ステークス)、ヒシアケボノ(1995年のスプリンターズステークス)、ダンツシアトル(1995年の宝塚記念)というGⅠウィナーが誕生した。

 この流れは1998年にモーリスドゲスト賞(仏G1)を勝ったシーキングザパール、同年のジャックルマロワ賞(仏G1)を制したタイキシャトルなど、文字通りに世界レベルの成績を残す時代へと進んでいった。その契機となったリンドシェーバーはもっと評価されてよい優駿だと筆者は考えている。

文●三好達彦

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