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格闘技・プロレス

雪妃真矢の告白。スターダム参戦の意味と“強すぎる嫌悪感”を抱いたジュリアとの遺恨戦に挑む理由「人を裏切って苦しめたり――」

萩原孝弘

2023.03.02

 そして、自分は封印したはずの扉をこじ開けてきたジュリアへの想いが雪妃にはある。

「ジュリア選手のことを公に批判したことはないし、参戦した時もこちらから喧嘩を売ることはしませんでした。それも、いまさら過去を掘り返して、誰かが心を痛めたり過去を知らないファンの方に嫌な思いさせる必要があるのか疑問だったから。

 なので、参戦が決まってあちらが私について批判の記事を上げた時、向こうは火をつけてやろうと思ったのかもしれないけど、こっちは逆に冷静になってしまった。呆れましたね。『あなたが私に恨みを語るの?』って。だから参戦からしばらくはきっとお客様にも伝わる温度差がありましたよね」

 正直な心境は抑えきれなかった。しかし、「戦っていく中で状況が変わってきました。こちらが過去を掘り返さなくても、遺恨だ、遺恨だと、自分の意思とは関係なく機が熟していくのを感じた。生モノだから、リアルな感情と生の反応で動きだした」と心が動いた。

「今まで避けてきた過去の記憶、私が無きことにしていただけで、掘り返してみれば戦うのには充分な理由があって。スターダム参戦が仲間の為と思ったのは本心だけど、本能的には、ジュリア選手と向き合う準備が出来たからかもしれないね」
 
 その瞬間、パンドラの箱の施錠は解かれた。

「人を裏切って苦しめたり、悲しませて成功した人間がベルト引っさげて人を見下してくるのはたまったもんじゃないよ。傷ついた当時の仲間やファンの気持ちも勝手に背負って戦います。この一戦に勝利して、みんなの過去の思いを払拭するきっかけになれたら本望だな。そして、彼女の私に対する嫌悪、憎しみや思いもリング上で全て受け取りたいです。プロレスラーだから戦うことでしか何かを残せない。だけどこの試合は何かが残るのかどうかもわからない」

 2月4日に行なわれたプロミネンスの鈴季すず対ジュリア戦は、燃えたぎっていた。しかし、今回は「雪妃は静かに燃える青い炎になるかな。もしくは冷徹な氷? 凍傷にご注意ください」と雪妃は不敵に語った。

 リング外では縁を大切に生きてきた雪妃真矢。繋がるはずの無かった縁が繋がる3.4のリング。自らのアイデンティティーを貫くため、COOLを越えたCOLDなマインドで、潰す。

取材・文●萩原孝弘
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