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バレーボール

「体罰や暴力は起こりようもありません」バレーボール元日本代表・浅野博亮の挑戦。愛知大バレー部へ日替わりで監督を派遣し競技力アップへ

THE DIGEST編集部

2023.05.05

試合前練習で指導する高松卓矢コーチ 写真:北野正樹

試合前練習で指導する高松卓矢コーチ 写真:北野正樹

「ヒートアップしてしまいました」と恥ずかしそうに振り返った高松さんは「客観的に見て負けても悔しくないということは、自分たちのやっている練習がその程度のものですよ、と認めていることになります。普段にやっている取り組みが、試合中の態度や結果につながっています。ただ、そこを変えるのは僕らの仕事ではありません。僕らはきっかけを与えるだけです」と語る。

 浅野さんに依頼されて引き受けたが、自宅からキャンパスまで車で約2時間。豊田合成の第二営業部バリューアップ営業室でモデリスタなど車の外装パーツを扱う仕事との兼ね合いもあり、平日に指導することは難しいのが実情。それでも、選手たちの心に響けばと願う。
 
 試行錯誤は、選手側も同様だ。

 6人の監督と選手間のパイプ役になっている加藤主将は「戸惑いというより、どうしていこうかという迷いの方が強いですね。経験豊富な方々が監督になられると聞いて『やった。これで勝てるやん』と思ったのですが、いろんな監督さんによって選手のモチベーションも変わったりすることがあります。思っていたのと違うなというギャップもあります。試合しか来ない監督さんの言葉が選手に伝わっていない感もあります。僕の力不足もありますが、僕も選手全員の意見をくみ取っているわけでもないし、監督さんの考えをくみ取れていないところもあります。お互いに探り合いという感じですね」と明かす。

 東海大学連盟の副理事長で、大学入学後、バレーに転向した日本代表MBの山内晶大(パナソニック)を育てた愛知学院大の植田和次監督は「スポーツの指導者としての在り方としては、面白い試みです。ただ、大学生に対する指導の9割は生活指導で、技術指導は1割程度。バレー部長が生活面をしっかりと見て、その部分のバランスをしっかりと取る必要はあります。新しい技術を教わりたいと思って進学する選手も出るだろうし、引退した選手のセカンドキャリアにもつながります。いい成功例を作ってほしいですね」と期待を寄せる。

 新たな試みから1か月。6人の監督の指導できる環境も違い、時間の制約もある。それでも、浅野さんは試合前の練習中に、多くの選手に声を掛けコミュニケーションを図る。前の試合に出場しながら、その日出場しない選手には「前の試合の出来が悪いからではなく、違う選手を試したいから」と、明確に理由を伝える。

 ただ、短期間で25人の選手とコミュニケーションを取り、信頼関係を構築していくのは容易なことではない。

「2年間、監督がいない中で練習をしてきて、Vリーグのようにモチベーションが高い選手ばかりではありません。選手の顔と名前やプレーの特徴などは把握していますが、今は信頼関係を作っていく段階。練習メニューも途中から大きく変更すれば、チームがゴチャゴチャになることは、現役時代に経験していますので、春のリーグ戦が終わってからになります。まだまだ時間はかかりますが、選手が納得をして、主体性を持って取り組めばすごくいい流れになると思います」と浅野さん。

 大学スポーツに風穴を開ける日が来ることを信じて、地道に取り組む。

取材・文●北野正樹

【著者プロフィール】
きたの・まさき/2020年11月まで一般紙でプロ野球や高校野球、バレーボールなどを担当。関西運動記者クラブ会友。
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