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食と体調管理

「不可能は可能性だ」たゆまぬ向上心と探求心でパラ・クロスカントリースキー日本代表を牽引する新田佳浩の強さと食生活

松原孝臣

2023.01.05

写真:GettyImages

写真:GettyImages

■チーム力を上げるために

――具体的にどのように考えているのでしょうか。

 北京大会では、後輩の川除大輝選手が金メダルを獲得しました。ただ、これから世界で戦っていくときに彼自身のメダルへのプレッシャーを軽減させるためには、チーム力、他の選手の競技力も上げていかないと、と思います。

 チームにはブラインド、スタンディング、シットスキー、3つの男女のクラス、つまり6クラスあるんですけれども、クラスで表彰台、または複数のメダルを取るのはチームとしての目標ではあるので、競技者としての立場とともに、僕が20年以上かけて学んだことを少しでも還元できるような形になっていけばいいかな、と思っています。

――選手とコーチ、2つの立場を持って行くうえで、心がけているのはどのようなことでしょうか。

 ストイックにやってきて、だから他の選手に「なんでできないんだ」って言ってしまいがちですが、子供に教えるのと同じかなと思う部分があって、子供自身はできないところの方が多いですよね。

 できないことをちょっとできることによって向上心も上がっていくので、これができない、あれができないというよりは、これがちょっとできるようになったから、じゃあ、これを伸ばしていこうかという形で自己肯定感を高めていくようなコーチングをしていくべきなのかな、と思っています。

 僕も選手として結果を出すために頑張っている姿を見せる中で他の選手たちも頑張って、それを見て僕自身も頑張ろうとなっていくと思います。能動的に皆がやれるようになっていくチームを目指していきたいと思います。
 
――長く競技を続けていくなかで新田さんの原動力とは何でしょうか

 楽しいということが大前提だと思います。自分自身がある程度完成したなと納得した部分はあるんですが、あとで映像を見ると「もっとこうした方が良かったな」と心残りがあって、じゃあもっと上手にできないかと上達したいという思いを常に持っていることが大事です。

 子どもたちが走る姿を見て自分のフォームより素直に走れているなと思ったときに子供の靴の裏を見せてもらったり、子供の走る映像を横から撮影して参考にしたり、今までの成功体験にとらわれず、次は別の方法でトライしてみようと新しい方法がどんどん出てくるのが長く続けられる要因になっていると感じます。

――ジュニアアスリートへのアドバイスをお願いします

 ジュニアの子たちはどうしても学校の先生やコーチが言ったことを素直に聞くことが多いと思いますが、僕としては自分の感性や思っていることをちゃんと言葉にして伝えてほしいです。

 人生や競技のピークというのいつ来るかわかりません。競技をやっているなかで学生時代がピークな場合もあれば、社会人になってピークを迎えることもあるので、諦めずに継続してやり続けていればチャンスは訪れると思います。

 そのためには、怪我をしないことも重要で、ジュニア世代のときからしっかり食事、睡眠をとることを意識してほしいですね。

 練習後にマッサージを受けるなどのケアも大切だと思いますが、大前提としてまずは自分自身で出来ることに取り組むことが大切です。スポーツをやるうえで、誰かに責任を押しつけてしまう考え方はプラスにはならないので、自分がしっかりと納得できるように競技と向き合って続けていってほしいと思います。


写真提供:日立ソリューションズ

<プロフィール>
新田佳浩(にったよしひろ)
1980年6月8日生まれ、177cm、68kg、岡山県西粟倉村出身
筑波大学卒業、日立ソリューションズ所属

パラ・クロスカントリースキーのエースとして長期に渡り活躍。
パラリンピックに1998年長野から2022年北京まで7大会連続出場を果たす。2010年バンクーバー大会で2個の金メダルを獲得。同一大会での複数金メダルは日本選手初。2018年平昌でも金メダルを獲得、計5つのメダルを手にする。
 

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