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海外サッカー

「私は変わった」前節レッドカードのフリック監督、冷静さが売りのドイツ人が感情を解放!「ナーバスになってるんじゃない、バルサのために生きているんだ」

下村正幸

2025.10.22

ジローナ戦で退席処分となったフリック監督は、次節のクラシコでは指揮を執れなくなった。(C)Getty Images

ジローナ戦で退席処分となったフリック監督は、次節のクラシコでは指揮を執れなくなった。(C)Getty Images

 バルセロナの監督は世界で最も消耗が激しい職のひとつと言われる。前監督のシャビは在任時にその大変さを盛んに強調していたし、ジョゼップ・グアルディオラは心身の疲労を退任の第一の理由と明言していた。

 そんな中、昨夏に就任したハンジ・フリックは、右も左もわからない外様監督というポジションを強みに変えて、「困難な局面でもチームが冷静さを保てるよう、平常心で状況を掌握していた。ほぼ常に結果とパフォーマンスの両方に支えられながら、穏やかで礼儀正しく楽観的な発言を続け、レアル・マドリーとその周辺の人々を不安に陥れた」と、スポーツ紙『SPORT』のリュイス・ミゲルサンス記者も評していた。

 しかし2年目の今シーズンは一転、苛立ちを露わにする機会が増えている。最も端的にそれが現われたのは、レッドカードを提示された18日のジローナ戦だが、以前からそうした声は出ていた。ジローナ戦の前日記者会見でも、チャンピオンズリーグ(CL)のパリ・サンジェルマン戦前のチームミーティングに遅刻したラミネ・ヤマルをペナルティーとしてスタメンから外そうとしたものの、クラブから待ったがかかったという報道に対し、「カスみたいな嘘だ」と嚙みついたばかりだった。

 確かに問題は山積している。同じく地元のスポーツ紙『MUNDO DEPORTIVO』は、代表ウィークを経て怪我人がさらに増えたロッカールームの野生病院化、カンプ・ノウの改修工事の遅れに伴う近隣スタジアムを転々としている”放浪生活”、昨シーズンと比較したチーム全体のプレー強度の低下、 イニゴ・マルティネスの予期せぬ退団、その後釜の獲得見送り、ヤマルを大スター扱いするフィーバーぶりと、フリックにストレスを与えている要素を列挙している。

 その中で『SPORT』の編集長、ジョアン・ベイルス氏が指摘するのが、バルサ特有の「エントルノ」の存在だ。「エントルノ」はスペイン語で「周囲の環境」を意味する。
 
 ジョアン氏は同紙のコラムで、「フリックはバルサを取り巻く全てにうんざりし始めているように見える。もう少し具体的に言えば、ロッカールームを取り巻く全て、そしてロッカールーム自体にも嫌気がさし始めているのかもしれない」と記している。

 そしてジョアン氏は「我々もみんなエントルノの一部だ。ジャーナリスト、経営陣、元経営陣、会長、元会長、元監督、元選手、会長選挙候補者、元候補者、アドバイザー……。バルサとはそういうものだ。全員が結束することは不可能だ」と説明した。

 フリックはバイエルンを率いた2019‐20シーズンのCL準々決勝でバルサに8-2で勝利した時、ゴールを積み重ねている間、顔色一つ変えなかった自身の姿を振り返り、「落ち着き過ぎた性格」と自ら認める人物だ。その彼が、ジローナ戦で退席処分を受け、ロナルド・アラウホが勝ち越しゴール(2-1)を決めた後には、片方の腕を曲げてもう一方の手で肘を叩くスペインでは侮辱に当たるジェスチャーを数回にわたって行なった。

 しかしその一方で、ジローナ戦の2日後のCLオリンピアコス(ギリシャ)戦の前日記者会見では、「別にナーバスになっているわけではない。以前とは感情の持ちようが異なる。バルサに来て、私は変わったんだ。今はずっと感情的になった。このクラブとこの街が好きで、全力を尽くしたい。私はバルサのために生きている」と語り、いつもの前向きな姿勢を示した。「エントルノ」の有害ぶりを自覚しつつ、バルサを指揮する意味をより噛み締めながら、フリックは2年目のシーズンを戦っている。

文●下村正幸

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