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海外サッカー

ドイツを追い詰めイタリアを一蹴したスイス「躍進の秘密は“流動性”」、準々決勝のイングランド戦で注目すべきポイントは…【EURO2024コラム】

片野道郎

2024.07.03

司令塔ジャカはビルドアップから崩しの局面まで、攻守にわたってチームに貢献している。(C)Getty Images

司令塔ジャカはビルドアップから崩しの局面まで、攻守にわたってチームに貢献している。(C)Getty Images

 EURO2024のグループステージ(GS)でひときわ強い輝きを放ってベスト8に勝ち上がったのがスイスだ。GSではドイツを追い詰め、ラウンド・オブ16でイタリアを一蹴した勇敢で秩序の取れた戦いぶりは、準々決勝で対戦するイングランドにとっても大きな脅威になるだろう。

【動画】ドイツを土壇場まで追い詰め、イタリアに完勝した2試合のハイライトをチェック!

 スイスは、ジュード・ベリンガムやハリー・ケイン(いずれもイングランド)、ジャマル・ムシアラやニクラス・フュルクルク(いずれもドイツ)のように、たったひとつのプレーで試合を解決する際立った「個」を擁しているわけではない。しかし11人が常に連携を保ってひとつの組織として機能する戦術的な洗練度、とりわけポジションに縛られることなく動きながらスペースを作り出しては使う“流動性”の高さ、そして相手に強いる戦術的困難の大きさは、それを補ってあまりある強みだ。

 その強みが最もはっきりと表れているのが、司令塔グラニト・ジャカを中核とする後方からのビルドアップ。基本システムは3ー4ー3だが、ビルドアップ時の陣形は相手のプレッシングに対して「プラス1」の数的優位を保てるよう、最終ラインのファビアン・シェアとマヌエル・アカンジ、中盤のジャカが形成する三角形を基本としながら流動的に変化する。

 ポイントは、相手プレスに対して「プラス1」の数的優位を保つこと。イングランドのように4ー4ー2の配置からハイプレスをかけてくる相手に対しては、左CBのリカルド・ロドリゲス、あるいはジャカ自身が最終ラインに加わったり、GKヤン・ゾマーがパス回しに参加することで、2対3の数的優位を作り出す。
 
 その「プラス1」から出てくるパスを受ける中盤でも、ジャカの周囲にMFレモ・フロイラー、さらには左WBミシェル・エービシャーが入り込むことで、中央ゾーンで数的優位を作ってフリーの受け手を生み出し、そこからさらに前線へと縦パスを送り込む。例えばイタリアはこの流動性の高いビルドアップを前にしてプレスの的が絞り切れず、ジャカやフロイラーにフリーで前を向く状況を作り出されて、大きな困難に陥った。イングランドもその二の舞いを踏む可能性は十分にある。

 スイスの攻撃が厄介なのは、敵陣までボールを運んだ後のファイナルサード攻略でも、流動的なポジションチェンジで守備側を混乱させるところ。とりわけ顕著なのが左サイドだ。3バックのシステムでは通常、WBは大外レーンを縦に上下動することが多いが、スイスの左WBエービシャーは、セントラルMFが本職ということもあり、左WGのルベン・バルガス(あるいはダン・エンドイェ)と入れ替わる形で頻繁に中に入ってくる。

 さらに左CBのロドリゲス(こちらの本職はWB)も大きく攻め上がり、さらに中盤のジャカ、CFブレール・エムボロ(あるいはクワドウォ・ドゥアー)が絡むことで左サイドに人数をかけて敵CBを引っ張り出し、そのスペースを後方あるいは逆サイドから入ってきた選手が使ってフィニッシュを狙う。
 
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