イタリア代表が大混乱に陥っている。
6月6日に敵地オスロで行なわれたワールドカップ欧州予選でノルウェーに0-3の惨敗を喫し、グループ首位での予選突破に赤信号が灯ると、その2日後にFIGC(イタリアサッカー連盟)のガブリエレ・グラビーナ会長がルチャーノ・スパレッティ監督に解任を通告。にもかかわらず、その翌日、週明け9日のモルドバ戦は引き続き指揮を執る異例の事態になった。
グラビーナ会長が後任監督候補として白羽の矢を立てたのは、昨年一度は引退を表明しながら、今シーズン途中にローマの監督に就任してチームを劇的に立て直した74歳のクラウディオ・ラニエリだった。これで本当に監督職を引退し、新シーズンからはクラブ幹部の要職に就く予定だった名伯楽は、それとの兼任を条件に一度は受諾に傾き、後任はすんなり決まるかのように見えた。
しかし続く10日の朝になって、FIGCの規約上、代表監督に就くとローマでの活動に制約がかかることが判明。「愛するクラブ」を優先する決断を下してFIGCに断りを入れる。これでイタリア代表は監督不在というさらに異例の事態に陥ってしまった。
次回の代表招集はW杯予選が再開する9月になるため、すぐに後任を選ぶ緊急性があるわけではない。しかし、W杯まで残り1年のタイミングで、代表チームとしてのプロジェクトが事実上白紙に戻ってしまったのが、由々しき事態であることに変わりはない。イタリアは過去2大会続けてプレーオフで敗退してW杯出場を逃しており、今回こそ何が何でも出場権を勝ち取らなければならない立場にあるのだから尚更である。明確なビジョンも計画性もない、宙ぶらりんの状態――。これが北中米W杯を1年後に控えたイタリア代表の現実である。
すべての引き金は、ノルウェー戦での不甲斐ない敗北だった。
今回のW杯欧州予選は、本大会出場枠の拡大(32か国から48か国)に伴い、UEFAの出場枠も13から16に増加。加盟54か国を12グループに分け、各グループ首位は直接出場権を獲得、2位はプレーオフに回るフォーマットになっている。イタリアが入ったグループIは、ノルウェー、イスラエル、エストニア、モルドバで構成。ノルウェーが唯一最大のライバルであることは、当初から明らかだった。
1994年のアメリカW杯でイタリアと対戦したこともあるノルウェーは、EURO2000を最後に代表のビッグトーナメント(W杯、EURO)から遠ざかっている。FIFAランキングも38位に留まっていることから、中堅国よりも弱小国に近い存在と見られがちだ。しかし近年は国を挙げての選手育成ブログラム(スペインの影響を強く受けている)が成功して、アーリング・ハーランド(マンチェスター・シティ)、マーティン・ウーデゴー(アーセナル)、アントニオ・ヌサ(RBライプツィヒ)といったタレントを輩出。急速に実力をつけてきている。
直近のUEFAネーションズリーグでは、オーストリア、スロベニアと同居するリーグBグループ3で1位になり、イングランド、チェコ、ウェールズと並んでリーグA昇格を決めた。イタリアにとって簡単でない相手であることは明らかだった。
【動画】イタリア代表が臨んだW杯予選、ノルウェー戦とモルドバ戦のハイライト!
しかも運の悪いことに、予選のカレンダーではノルウェーとの対戦が、イタリアにとって歴史的に鬼門となっているシーズン終了直後の6月に、しかもアウェーで組まれていた。イタリアの選手たちは心身ともに疲弊しており、リッカルド・カラフィオーリ(アーセナル)、アレッサンドロ・ブオンジョルノ(ナポリ)、モイゼ・ケーン(フィオレンティーナ)らが故障欠場。直前のCL決勝でパリ・サンジェルマンに0-5の惨敗を喫したばかりのインテル組(アレッサンドロ・バストーニ、フェデリコ・ディマルコ、ニコロ・バレッラ、ダビデ・フラッテージ)はそのショックから立ち直っておらず、彼らも含めた主力の多くが軽い故障や疲労で90分フル出場が不可能なコンディションだった。
さらに、イタリアはすでに気温30度近い初夏の気候なのに対し、オスロは10度以下。しかも試合当日は冷たい雨が降っていた。苦戦を強いられる材料は揃っていた。果たして試合は、まさにイタリアが怖れていた通りの結果になった。イタリアが序盤からボールを支配するものの、ラスト30メートルで危険な場面をまったく作れない。対してノルウェーは、秩序の取れた4-5-1のローブロックとアグレッシブなハイプレスを巧妙に使い分けてイタリアの攻撃を押し返し、中盤でのボール奪取から左ウイングのヌサがドリブルで2人、3人をかわして一気にイタリアゴールに迫る場面を繰り返し作り出す。
14分の先制ゴールも、バストーニのサイドチェンジをインターセプトしてのカウンターアタックからヌサがドリブルで持ち上がって送り込んだスルーパスを、逆サイドから斜めのフリーランで裏に走り込んだアレクサンデル・スルロットがGKジャンルイジ・ドンナルンマの股を抜いて流し込んだものだった。
試合はその後も、イタリアがボールを持つが危険な場面を作るのはノルウェー、という流れで進む。34分にはGKのロングキックのこぼれ球を拾ったヌサがドリブルで持ち込むと、そのままミドルシュートをゴール左上隅に突き刺して0-2。さらに42分、やはり中盤でのボール奪取からの展開(これも起点はヌサだった)で、鋭い裏への飛び出しでウーデゴーのスルーパスを引き出したハーランドが決めて決定的な0-3。イタリアはすでに反発する余力すら残っておらず、後半はゴールを奪うよりもこれ以上の失点を避けるだけで精一杯。文字通りの完敗だった。
この敗北がイタリアに与えたショックは大きかった。ノルウェーは、イタリアがUEFAネーションズリーグ準々決勝を戦っていた3月にすでに予選をスタートし、モルドバに5-0、イスラエルに4-2で勝利を収めている。さらにイタリアを3-0で下したことで、3戦3勝の勝点9、得失点差+10で圧倒的なグループ首位に立った。イタリアは2試合少ないとはいえ勝ち点0、得失点差-3である。
6月6日に敵地オスロで行なわれたワールドカップ欧州予選でノルウェーに0-3の惨敗を喫し、グループ首位での予選突破に赤信号が灯ると、その2日後にFIGC(イタリアサッカー連盟)のガブリエレ・グラビーナ会長がルチャーノ・スパレッティ監督に解任を通告。にもかかわらず、その翌日、週明け9日のモルドバ戦は引き続き指揮を執る異例の事態になった。
グラビーナ会長が後任監督候補として白羽の矢を立てたのは、昨年一度は引退を表明しながら、今シーズン途中にローマの監督に就任してチームを劇的に立て直した74歳のクラウディオ・ラニエリだった。これで本当に監督職を引退し、新シーズンからはクラブ幹部の要職に就く予定だった名伯楽は、それとの兼任を条件に一度は受諾に傾き、後任はすんなり決まるかのように見えた。
しかし続く10日の朝になって、FIGCの規約上、代表監督に就くとローマでの活動に制約がかかることが判明。「愛するクラブ」を優先する決断を下してFIGCに断りを入れる。これでイタリア代表は監督不在というさらに異例の事態に陥ってしまった。
次回の代表招集はW杯予選が再開する9月になるため、すぐに後任を選ぶ緊急性があるわけではない。しかし、W杯まで残り1年のタイミングで、代表チームとしてのプロジェクトが事実上白紙に戻ってしまったのが、由々しき事態であることに変わりはない。イタリアは過去2大会続けてプレーオフで敗退してW杯出場を逃しており、今回こそ何が何でも出場権を勝ち取らなければならない立場にあるのだから尚更である。明確なビジョンも計画性もない、宙ぶらりんの状態――。これが北中米W杯を1年後に控えたイタリア代表の現実である。
すべての引き金は、ノルウェー戦での不甲斐ない敗北だった。
今回のW杯欧州予選は、本大会出場枠の拡大(32か国から48か国)に伴い、UEFAの出場枠も13から16に増加。加盟54か国を12グループに分け、各グループ首位は直接出場権を獲得、2位はプレーオフに回るフォーマットになっている。イタリアが入ったグループIは、ノルウェー、イスラエル、エストニア、モルドバで構成。ノルウェーが唯一最大のライバルであることは、当初から明らかだった。
1994年のアメリカW杯でイタリアと対戦したこともあるノルウェーは、EURO2000を最後に代表のビッグトーナメント(W杯、EURO)から遠ざかっている。FIFAランキングも38位に留まっていることから、中堅国よりも弱小国に近い存在と見られがちだ。しかし近年は国を挙げての選手育成ブログラム(スペインの影響を強く受けている)が成功して、アーリング・ハーランド(マンチェスター・シティ)、マーティン・ウーデゴー(アーセナル)、アントニオ・ヌサ(RBライプツィヒ)といったタレントを輩出。急速に実力をつけてきている。
直近のUEFAネーションズリーグでは、オーストリア、スロベニアと同居するリーグBグループ3で1位になり、イングランド、チェコ、ウェールズと並んでリーグA昇格を決めた。イタリアにとって簡単でない相手であることは明らかだった。
【動画】イタリア代表が臨んだW杯予選、ノルウェー戦とモルドバ戦のハイライト!
しかも運の悪いことに、予選のカレンダーではノルウェーとの対戦が、イタリアにとって歴史的に鬼門となっているシーズン終了直後の6月に、しかもアウェーで組まれていた。イタリアの選手たちは心身ともに疲弊しており、リッカルド・カラフィオーリ(アーセナル)、アレッサンドロ・ブオンジョルノ(ナポリ)、モイゼ・ケーン(フィオレンティーナ)らが故障欠場。直前のCL決勝でパリ・サンジェルマンに0-5の惨敗を喫したばかりのインテル組(アレッサンドロ・バストーニ、フェデリコ・ディマルコ、ニコロ・バレッラ、ダビデ・フラッテージ)はそのショックから立ち直っておらず、彼らも含めた主力の多くが軽い故障や疲労で90分フル出場が不可能なコンディションだった。
さらに、イタリアはすでに気温30度近い初夏の気候なのに対し、オスロは10度以下。しかも試合当日は冷たい雨が降っていた。苦戦を強いられる材料は揃っていた。果たして試合は、まさにイタリアが怖れていた通りの結果になった。イタリアが序盤からボールを支配するものの、ラスト30メートルで危険な場面をまったく作れない。対してノルウェーは、秩序の取れた4-5-1のローブロックとアグレッシブなハイプレスを巧妙に使い分けてイタリアの攻撃を押し返し、中盤でのボール奪取から左ウイングのヌサがドリブルで2人、3人をかわして一気にイタリアゴールに迫る場面を繰り返し作り出す。
14分の先制ゴールも、バストーニのサイドチェンジをインターセプトしてのカウンターアタックからヌサがドリブルで持ち上がって送り込んだスルーパスを、逆サイドから斜めのフリーランで裏に走り込んだアレクサンデル・スルロットがGKジャンルイジ・ドンナルンマの股を抜いて流し込んだものだった。
試合はその後も、イタリアがボールを持つが危険な場面を作るのはノルウェー、という流れで進む。34分にはGKのロングキックのこぼれ球を拾ったヌサがドリブルで持ち込むと、そのままミドルシュートをゴール左上隅に突き刺して0-2。さらに42分、やはり中盤でのボール奪取からの展開(これも起点はヌサだった)で、鋭い裏への飛び出しでウーデゴーのスルーパスを引き出したハーランドが決めて決定的な0-3。イタリアはすでに反発する余力すら残っておらず、後半はゴールを奪うよりもこれ以上の失点を避けるだけで精一杯。文字通りの完敗だった。
この敗北がイタリアに与えたショックは大きかった。ノルウェーは、イタリアがUEFAネーションズリーグ準々決勝を戦っていた3月にすでに予選をスタートし、モルドバに5-0、イスラエルに4-2で勝利を収めている。さらにイタリアを3-0で下したことで、3戦3勝の勝点9、得失点差+10で圧倒的なグループ首位に立った。イタリアは2試合少ないとはいえ勝ち点0、得失点差-3である。