シーズン最終節を迎えた時点で2位インテルとの勝点はわずか1。その最終戦でカリアリを2-0で下したナポリが、近年まれに見る熾烈な優勝争いを制して、2年ぶり通算4度目のスクデットを勝ち取った。
2年前にはルチャーノ・スパレッティ監督の下で33年ぶりの栄冠を手にしたとはいえ、続く昨シーズンは文字通りチームが崩壊し、二度の監督交代を経て10位という屈辱的な結果に終わった。そこからわずか1年でここまで劇的な復活を遂げるとは、誰も予想していなかったに違いない。
その立役者を1人挙げるとすれば、やはりアントニオ・コンテ監督以外にはいないだろう。チームの戦力値(登録選手の市場評価総額)は「北のビッグ3」はもちろん、アタランタにも及ばないリーグ5位。しかもシーズン半ばの1月に、独力で違いを作り出せる唯一の存在として最も重要な戦力だったフビチャ・クバラツヘリアを失い、実質的にその穴埋めがないまま後半戦を戦わなければならなかった。
にもかかわらず、ナポリがシーズンを通して優勝争いの主役を演じ、最後まで続いたインテルとの厳しいデッドヒートを制することができたのは、指揮官があらゆる手段を駆使して、その相対的に限られた陣容から持てる力を最大限に、それこそ一滴も残さず絞り出して戦い切ったからにほかならない。
過去にユベントス、チェルシー、インテルにリーグタイトルをもたらし、「私を雇うということは、タイトルを勝ち取る野心と覚悟があるということ」と公言して憚らない自信家だが、インテルでもそうだったように1年目の今シーズンはチームの土台を固める年というのが当初の位置付け。優勝は、視野には入っていたとしても現実的な目標ではなかったはずだ。
補強が進まない中で迎えた開幕戦は、ヴェローナに0-3の惨敗という考え得る最悪のスタートだった。そこからクラブに圧力をかけてロメル・ルカク、ダビド・ネーレス、スコット・マクトミネイ、ビリー・ギルモアら新戦力を手に入れ、当初構想していた陣容が整うと、長年用いてきた3バック(3-4-2-1)から4バック(4-3-3)にシステムを切り替える。
これはスタニスラフ・ロボトカ、アンドレ・アンギサという既存戦力を活かしながらマクトミネイを中盤に組み込み、しかもクバラツヘリアをウイングとして活かすための解決策だった。しかもコンテは、ボール保持時にはマクトミネイを最前線に上げてルカクとの「ツインタワー」を形成し、2列目にウイング2人を配する4-2-2-2、非保持時にはそこから右ウイングのポリターノを最終ラインまで下げて5バックとする5-3-2という、複雑な可変システムもそこに組み込んだ。
この攻→守の可変は、マクトミネイを前線から中盤に戻らせ、入れ替わりにクバラツヘリアを上げることで守備の負担を軽減するという狙いも持っていた。クバラツヘリアはその恩恵を受ける形で、12月まで5得点3アシストとCFルカクに次ぐ数字を残すことになる。
ところが年が明けると前述の通り、クバラツヘリアがかねてから水面下でオファーを受けていたパリ・サンジェルマンへの移籍を強く要求。クラブも契約上の問題からそれを受け容れざるをえない不測の事態が発生する。しかも、その後釜候補だったアレハンドロ・ガルナチョ(マンチェスター・U)、カリム・アデイェミ(ドルトムント)らの獲得にことごとく失敗。ミランで出場機会がなかったノア・オカフォーをレンタルしたものの、戦力ダウンは明らかだった。
こうして冬の移籍ウィンドウが閉じた直後さらに、クバラツヘリアの実質的な後釜となったネーレスまでが故障離脱。窮地に追い込まれたコンテは、システムを3バックに戻すなどの手当てを施すものの、2月の4試合で1勝もできず(3分け1敗)、ついにインテルに首位の座を明け渡すことになる。
この時点でのナポリは、そのままずるずると順位を下げてもまったくおかしくない状態だった。しかもそこで迎えたのが、他でもないインテルとの直接対決。前半半ばにフェデリコ・ディマルコのFKで先制を許し、残り5分を切るまで0-1のままだったこの試合を落としていれば、スクデット争いはそこで終わっていたかもしれない。
しかし87分、途中出場したフィリップ・ビリング(数少ない冬の新戦力だった)のゴールで引き分けをもぎ取り、インテルに1ポイント差でしがみつく。長いシーズンを振り返れば、この試合がおそらくナポリにとって最大の分水嶺だった。試合後にコンテはこう語っている。「我々はまだここにいる。今日我々はサポーターに強い情念を伝えることができた。この勝利は彼らへの、そして何よりも我々自身に対しての、強く望めば必ずそれを手に入れることができる、というメッセージだ」。
【動画】ナポリが優勝を決めたカリアリ戦のハイライト&優勝セレモニー
2年前にはルチャーノ・スパレッティ監督の下で33年ぶりの栄冠を手にしたとはいえ、続く昨シーズンは文字通りチームが崩壊し、二度の監督交代を経て10位という屈辱的な結果に終わった。そこからわずか1年でここまで劇的な復活を遂げるとは、誰も予想していなかったに違いない。
その立役者を1人挙げるとすれば、やはりアントニオ・コンテ監督以外にはいないだろう。チームの戦力値(登録選手の市場評価総額)は「北のビッグ3」はもちろん、アタランタにも及ばないリーグ5位。しかもシーズン半ばの1月に、独力で違いを作り出せる唯一の存在として最も重要な戦力だったフビチャ・クバラツヘリアを失い、実質的にその穴埋めがないまま後半戦を戦わなければならなかった。
にもかかわらず、ナポリがシーズンを通して優勝争いの主役を演じ、最後まで続いたインテルとの厳しいデッドヒートを制することができたのは、指揮官があらゆる手段を駆使して、その相対的に限られた陣容から持てる力を最大限に、それこそ一滴も残さず絞り出して戦い切ったからにほかならない。
過去にユベントス、チェルシー、インテルにリーグタイトルをもたらし、「私を雇うということは、タイトルを勝ち取る野心と覚悟があるということ」と公言して憚らない自信家だが、インテルでもそうだったように1年目の今シーズンはチームの土台を固める年というのが当初の位置付け。優勝は、視野には入っていたとしても現実的な目標ではなかったはずだ。
補強が進まない中で迎えた開幕戦は、ヴェローナに0-3の惨敗という考え得る最悪のスタートだった。そこからクラブに圧力をかけてロメル・ルカク、ダビド・ネーレス、スコット・マクトミネイ、ビリー・ギルモアら新戦力を手に入れ、当初構想していた陣容が整うと、長年用いてきた3バック(3-4-2-1)から4バック(4-3-3)にシステムを切り替える。
これはスタニスラフ・ロボトカ、アンドレ・アンギサという既存戦力を活かしながらマクトミネイを中盤に組み込み、しかもクバラツヘリアをウイングとして活かすための解決策だった。しかもコンテは、ボール保持時にはマクトミネイを最前線に上げてルカクとの「ツインタワー」を形成し、2列目にウイング2人を配する4-2-2-2、非保持時にはそこから右ウイングのポリターノを最終ラインまで下げて5バックとする5-3-2という、複雑な可変システムもそこに組み込んだ。
この攻→守の可変は、マクトミネイを前線から中盤に戻らせ、入れ替わりにクバラツヘリアを上げることで守備の負担を軽減するという狙いも持っていた。クバラツヘリアはその恩恵を受ける形で、12月まで5得点3アシストとCFルカクに次ぐ数字を残すことになる。
ところが年が明けると前述の通り、クバラツヘリアがかねてから水面下でオファーを受けていたパリ・サンジェルマンへの移籍を強く要求。クラブも契約上の問題からそれを受け容れざるをえない不測の事態が発生する。しかも、その後釜候補だったアレハンドロ・ガルナチョ(マンチェスター・U)、カリム・アデイェミ(ドルトムント)らの獲得にことごとく失敗。ミランで出場機会がなかったノア・オカフォーをレンタルしたものの、戦力ダウンは明らかだった。
こうして冬の移籍ウィンドウが閉じた直後さらに、クバラツヘリアの実質的な後釜となったネーレスまでが故障離脱。窮地に追い込まれたコンテは、システムを3バックに戻すなどの手当てを施すものの、2月の4試合で1勝もできず(3分け1敗)、ついにインテルに首位の座を明け渡すことになる。
この時点でのナポリは、そのままずるずると順位を下げてもまったくおかしくない状態だった。しかもそこで迎えたのが、他でもないインテルとの直接対決。前半半ばにフェデリコ・ディマルコのFKで先制を許し、残り5分を切るまで0-1のままだったこの試合を落としていれば、スクデット争いはそこで終わっていたかもしれない。
しかし87分、途中出場したフィリップ・ビリング(数少ない冬の新戦力だった)のゴールで引き分けをもぎ取り、インテルに1ポイント差でしがみつく。長いシーズンを振り返れば、この試合がおそらくナポリにとって最大の分水嶺だった。試合後にコンテはこう語っている。「我々はまだここにいる。今日我々はサポーターに強い情念を伝えることができた。この勝利は彼らへの、そして何よりも我々自身に対しての、強く望めば必ずそれを手に入れることができる、というメッセージだ」。
【動画】ナポリが優勝を決めたカリアリ戦のハイライト&優勝セレモニー
関連記事
- 史上初のC降格、サンプドリアが抱えていた大問題…シンガポールの「影のオーナー」が送り込んだ役職のない人物が主導権、「マンチーニ一派」の処遇は不明【現地発コラム】
- 大激戦のCL準決勝、インテルとバルセロナの“紙一重の差”「守備における個のクオリティー不足が露呈し、それが直接的な敗因となったのは象徴的」【現地発コラム】
- 「サッカーというスポーツを、対立ではなく統合、闘争ではなく融和、戦争ではなく平和の象徴として位置付けた」ローマ教皇を追悼【現地発コラム】
- 「15年前の再現」を目指すインテル、CL4強の他チームにはない“強み”とは? 準決勝の相手バルサに対する戦術的相性は「まったく悪くない」【現地発コラム】
- モッタ解任→トゥードル招聘、2億ユーロのプロジェクトに失敗したユベントス。夏の監督選びこそ「最後になるべき“再スタート”の始まり」【現地発コラム】