夏の甲子園、大会第5日。この日は前日のような雨天中断もなく午前の部、夕方の部の合計4試合が行われた。最も強烈なインパクトを残したのが第2試合に登場した聖隷クリストファーのエース、高部陸（2年・投手）だった。

　1回の先頭打者の初球にいきなり死球を与えて出塁を許したものの、後続をしっかり抑えて無失点で切り抜けると、2回以降は危なげないピッチングを披露。3回に味方のエラーが絡んで1点こそ失ったが、9回を被安打4、自責点0、わずか107球で1失点完投勝利をあげてみせた。

　ストレートは終始140キロを超え、最速は145キロをマーク。174cm・68kgと決して大柄ではないが、躍動感あふれるフォームで腕の振りは鋭く、指にかかったボールは数字以上に打者の手元で勢いを感じた。130キロ台中盤のカットボールもしっかり腕を振って投げられ、鋭く変化するボールでカウント球としても勝負球としても使うことができる。中盤以降は緩いカーブとチェンジアップでも上手く緩急をつけ、最後まで相手打線に連打を許さなかった。

　大会第2日には同じ2年生左腕の末吉良丞（沖縄尚学）も3安打完封と見事な投球を見せたが、総合力では高部も決して引けを取らない印象で、来年の高校生サウスポーでは双璧の存在となりそうだ。

　下級生でもう1人目立ったのが明豊の川口琥太郎（1年・遊撃手）だ。1年生ながら春の九州大会では3試合すべて途中出場ながら、満塁ホームランを含む7打数6安打と驚異的な活躍を見せて話題となっていた選手だ。この日は6番で先発出場すると、第3打席で貴重な追加点となるライト前タイムリーを放つと、続く第4打席でもセンターに弾き返し4打数2安打1打点の活躍でチームの勝利に貢献した。 　まだ少しタイミングのとり方に淡白なところがあり、縦の変化球への対応などに課題は残るものの、鋭い振り出しのスウィングはとても1年生とは思えないレベルにある。ショートの守備も落ち着きがあり、7回には内野安打になったものの三遊間の深い当たりに追いつき、ファーストへダイレクトで送球する見事なプレーも見せた。脚力も備えており、今後九州で注目を集める存在となる可能性は高いだろう。

　3年生で存在感を示したのが佐藤仁（西日本短大付・一塁手）と野上士耀（明秀日立・捕手）の2人だ。佐藤は選抜でもホームランを放ったパワーヒッター。この日は1安打に終わったが、凡打でも鋭い当たりを放ち、春よりさらにスイングの迫力が増したように見えた。181㎝、95㎏という体格でもファーストの守備の動きも良く、大砲候補として今後が楽しみな存在だ。

　野上は中学時代から評判になっていた強肩強打の捕手。7回の守備では見事なスローイングで盗塁を阻止すると、9回の第4打席では高部のストレートをとらえてレフトへのツーベースを放って意地を見せた。捕手としての総合力の高さは全国でも間違いなく上位であり、将来的にはプロも狙える素材である。

構成●THE DIGEST編集部

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