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プロ野球

最初から最後まで“異例”づくめだった奥川恭伸のデビュー登板。神宮の空気を変えた一夜の記録

勝田聡

2020.11.11

ほろ苦いデビューとなったが、それでもゴールデンルーキーらしい特別感あふれる試合となった。写真:田口有史

ほろ苦いデビューとなったが、それでもゴールデンルーキーらしい特別感あふれる試合となった。写真:田口有史

 ヤクルトの2020年シーズンが終わった。

 開幕直後こそ上位を争ったものの徐々に失速し、結局は2年連続の最下位。それでも、光はあった。村上宗隆が昨年以上の活躍を見せ、最高出塁率のタイトルをほぼ手中に収めるとともに本塁打王と打点王を争い、打率も3割に乗せた。また、清水昇や宮本丈、濱田太貴といった今後のチームを背負うべき若燕たちが成長の証を見せた。

 そして最終戦に真打ちとして登場したのが、2019年ドラフト1位の逸材・奥川恭伸である。春季キャンプ前に右ヒジの軽度の炎症が見つかり、出遅れ。シーズン開幕後も、一時はコンディション不良でノースロー調整を余儀なくされた。それでも二軍で結果を残し、昨日の広島戦でデビューを飾った。シーズン最終戦ではあるが、奥川にとっては言わば“開幕戦”だ。

 結果は2.0回で9安打5失点。松坂大輔(西武)やダルビッシュ有(現カブス)のような、華々しいデビューとはならなかった。それでも、彼は神宮球場の空気を確実に変えた。
 
 試合開始のおよそ40分前となる17時18分。奥川はグラウンドに姿を見せるとダッシュを始めた。その瞬間から、カメラやスマホが一斉に奥川に照準を合わせる。

 奥川は気にする素振りも見せず、グラウンド内で行われているシートノックにも目をやりながら、アップを淡々とこなしていく。

 投手の試合前ルーティーンでもある長い距離でのキャッチボールは軌道が低い。重心を確かめるかのように時間をかけて行っていた。慎重に丁寧に、そんな姿勢がよく伝わってくる。

 ブルペンに入ると、周囲の注目度は一気に上がった。その投球姿を目に焼き付け、写真や動画に収めようとブルペン前の座席付近にファンがやってくる。係員に促され、自分の席へと戻っていく姿もちらほらあった。

 その様子は、2週間ほど前に行われた五十嵐亮太の引退試合のようだった。とはいえ、五十嵐は大ベテランであり、チームの功労者。その日は日米通算900試合を超える選手生活の集大成であり、注目度が高くなるのは当然だ。
 

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