専門5誌オリジナル情報満載のスポーツ総合サイト

  • サッカーダイジェスト
  • WORLD SOCCER DIGEST
  • スマッシュ
  • DUNK SHOT
  • Slugger
高校野球

学びは自分自身の中にある。順延と不戦勝によるブランクを乗り越えた智弁和歌山の“思考力”<SLUGGER>

氏原英明

2021.08.24

ピンチを迎えてマウンドに集まる智弁和歌山の選手たち。選手個々がしっかり考えることでブランクを克服した。写真:塚本凛平(THE DIGEST写真部)

ピンチを迎えてマウンドに集まる智弁和歌山の選手たち。選手個々がしっかり考えることでブランクを克服した。写真:塚本凛平(THE DIGEST写真部)

 これも大会を勝ち抜くための試練なのかもしれない。

 雨天のために順延が続き、さらに初戦の対戦相手だった宮崎商がチーム内の新型コロナウイルス蔓延によって大会を辞退。大会10日目になってようやく登場した智弁和歌山にとって、今日の高松商との対戦は、チームの地力が試された試合といっても過言ではなかった。

「正直言いますと、試合勘とか、監督としては心配する部分はあったんですけど、選手たちはチーム全員で1球1球集中して試合に臨んでくれていたと思います。頼もしかったです」
 
 試合後、中谷仁監督がそう振り返ったように、智弁和歌山ナインは初回から試合に入りこんでいた。

 1回は三者凡退に終わったものの、1番の宮坂厚希がカウント1-1からの3球目を捉えれば、2番・大仲勝海と3番・角井翔一朗はファーストストライクを積極的に振りにいった。三者凡退に終わったものの、積極性を見せようという姿勢が明らかに見えた。

 そして、2回からは選手たちが打席の中で考えて、相手投手に対峙していた。右打者はストレートを狙い、左打者は変化球に狙いを定める。中谷監督が指示をしたわけではないのだが、明確な意図が選手から感じられた。
 
 先制点が入ったのは3回表だった。

 先頭の大西拓磨が初球のカーブを狙って中前安打で出塁。1番・宮坂の犠打で二進すると2番・大仲がスライダーを中前へ弾き返して一、三塁とチャンスを拡大。3番・角井もスライダーを狙い右翼前適時打で1点を先制した。ヒットを打った左打者の3人はすべて変化球を狙い打っている。

 4番の右打者・徳丸天晴は一転してストレートを右翼線に落として2点目、さらに5番・岡西の犠牲フライで3点目を追加。岡西は左打者で、こちらもカーブを捉えたものだった。

 角井が変化球狙いの意図をこう説明する。

「相手バッテリーの傾向を見ていて、(左には)変化球が来るんじゃないかというデータもあったんで、それを打ちにいきました。結果が出て良かったです」

 畳みかけるような攻撃を売りにしている智弁和歌山だが、1回に積極的に打ちに行った姿勢、2回からの狙いを定めて相手先発投手を攻略した仕掛けは見事と言うほかない。相手の高松商は戸惑ったに違いない。
 
NEXT
PAGE

RECOMMENDオススメ情報

MAGAZINE雑誌最新号