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「正直、ずっと苦しかった」「いい形で終われたのは自信になった」今永昇太と鈴木誠也、ポストシーズンまで戦い抜いた者だからこその“総括”<SLUGGER>

ナガオ勝司

2025.10.21

東京ドームで幕を開けた鈴木と今永の2025年シーズンは、地区シリーズでの敗戦で終焉を迎えた。写真:GETTY IMAGES

 敗戦後のクラブハウスはいつも、静まり返っている。それがシーズン最後の試合であるならなおさらで、その静寂の中で、いくつもの別れの場面にも遭遇するのが常だ。

 10月11日の土曜日も同じだった。カブスは3戦先勝のナショナル・リーグ地区シリーズ第5戦、2勝2敗で迎えた最終決戦で、ブルワーズに1対3で敗れた。試合後のクラブハウスでは、あちこちで選手やコーチがお互いに健闘を称え、ハグをし、別れの言葉を交わすシーンが見られた。その間隙を見つけて、2連敗からの3連勝を期待したシカゴの地元メディアが選手を取り囲むのも見慣れた風景だった。

「負けて終わるなんて最悪だけれど、僕がここに来てから一緒にやってきた選手たちとは、信じられないような長い時間を過ごした親友のような関係であり、皆が家族のようなものだから」

 チーム最多の36本塁打を放ったマイケル・ブッシュ一塁手がポツリと言った。すぐ近くのロッカーでは、攻守の要であるダンズビー・スワンソン遊撃手が、憔悴し切った表情でメディアに対応している。

「長いシーズンを通じて同じ時間を過ごしていく中で、絆ってのは生まれるものだけれど、それが強ければ強いほど、最後に負けるのは酷い気分になるし、痛みも大きいし、今はまさにそれを感じているところだ」

 スワンソンと二遊間コンビを組むニコ・ホーナー二塁手は、感情を押し殺すような感じでこう言った。

「今年一年、皆でいろんなことを潜り抜けてきたし、いつもベストを尽くしてきたから後悔なんてないけれど、それで痛みが和らぐことはない」

 信じられないような守備範囲を武器にファインプレーを連発し、打撃でも30盗塁&30本塁打を達成した"PCA"ことピート・クロウ・アームストロング外野手が続ける。
 
「僕は(デビューして)まだ2年しかこのチームにいないけど、僕らはいつも一緒にいる家族のようなものだ。一緒にいろんなことを経験した皆と十月まで戦うことができたんだから、素晴らしい一年だったと思う」

 大勢のメディアに囲まれて説明責任を果たす。プロ野球選手の仕事の一部だとは言え、楽しいことではない。しかし、全選手がメディアに囲まれるわけではなく、テレビカメラやマイクが向けられるのは、その選手がチームを代表する主力である証でもある。もちろん、我らが鈴木誠也と今永昇太も、そこに含まれている。

「今はとにかく……」と着替え終わった鈴木誠也外野手が小さな声で言った。

「悔しいし、疲れました。今年は本当に長かったから」

 ドジャース相手の東京開幕シリーズは、他球団よりも約2週間も早い3月半ばだった。25本塁打、77打点と破竹の勢いで打ち続けた前半戦を終えると、2ヵ月近くという長いスランプを経験した。7月18日のレッドソックス戦で本塁打を含む2安打3打点と、好スタートを切ったものの、翌19日から9月25日のメッツ戦までの54試合では、打率.194、1本塁打13打点という大失速。その結果、シーズン打率やOPS(出塁率+長打率)などの成績は、昨季を超えることができなかった。

「今年は自分の中でも深刻なぐらいな感じで、(打撃の調子が)落ちていたので、すごくそこはいい勉強になりましたし、そこから立て直して、最後いい形で終われたのは自信になった。ギアが上がるポストシーズンで、いい投手がいる中でしっかり打てたのも自信になった。すべてが来年につながるように、明日からやっていけたらいい」
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「フルシーズン出たことがなかったんで、それはやっぱり長く感じた」