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【玉木正之のベースボール今昔物語:第19回】ロボット審判導入で球界から“名物審判”が消えてしまう?<SLUGGER>

玉木正之

2025.11.27

昨春のキャンプで試験導入もされたABS。来季の正式導入でMLBはどう変わるのか? (C)Getty Images

昨春のキャンプで試験導入もされたABS。来季の正式導入でMLBはどう変わるのか? (C)Getty Images

 MLBは2026年シーズンから、いわゆるロボット審判の導入を決めた。

 正式には「ボール/ストライク自動判定チャレンジシステム(=ABS=Automated Ball Strike Challenge System)」というもの。原則として、球審がまずは従来通りストライクかボールの判定を行うが、バッター、ピッチャー、キャッチャーのいずれかがコールに納得できず異議を唱える場合には、手でヘルメットか帽子に触れるアピールでチャレンジの意思を表明する。

 すると、ホームプレートを囲んだ6台のカメラが、あらかじめ計測してある打者の身長とホームプレートの位置からストライクゾーンを自動的に導き出し、投球がそのゾーンを通ったか否かを判定。画像をスコアボードに映し出し、ボールかストライクかを最終的に決定するというものだ。

 チャレンジの権利は、1試合につき両チームに各2回与えられる。判定が覆れば回数は減らないが、主張に失敗すれば権利は減る。ただし延長戦になった場合、権利がゼロになったチームには、各回ごとに新たに1回の権利が与えられる。

 韓国プロ野球では、昨年からすでにロボット審判が導入されていて、球審が装着したイヤホンへ伝えられた判定が最終決定となっている。MLBも同様の形式をマイナーリーグで試したが、人間的な要素を残したいという意図から、自動判定はチャレンジ方式となったという。

 ロボット審判は2019年、米独立リーグのアトランティック・リーグで実験が始まった。22年には1Aのフロリダ・ステート・リーグでも試験導入され、23~24年は3Aでさらに試行錯誤が重ねられた。今季はメジャーのオープン戦やオールスターで実験的導入が行われ、ついに来季から正式採用となる。
 
 さまざまな実験が重ねられただけあって、いまのところ目立った反対意見は聞かれない。小生も、チャレンジ後の限定使用を特に悪いこととは思わない。

 しかし、かつてのロン・ルチアーノのような“名物審判”が、完全に姿を消す(あるいは登場しなくなる)に違いないことには、少々寂しい気もするのだ。

 ルチアーノは引退後に『アンパイアの逆襲 大リーグ審判奮戦記』(文春文庫刊)という面白い本を書いた元アメリカン・リーグの審判員だ(69~79年在職)。原題は『Umpire
Strikes Back』といい、これは映画『スター・ウォーズ エピソード5帝国の逆襲(Empire Strikes back)』のパロディである。

 カレッジ・フットボールで活躍したルチアーノは100キロを超す巨体で、「アウト!」ではなく、「アウッアウッアウッアウッウウウーツ!」と激しく怒鳴りながら走者をピストルを撃つ真似をするなど異色の審判であり、ファンからの人気も高かった。

 ルチアーノのようなオーバーアクションで自チームに不利な判定を下されると、監督は普段以上に興奮するのも理解できる。ルチアーノ審判の天敵だったのが、オリオールズで17年(68~86年)にわたって監督を務め、リーグ優勝4回、ワールドシリーズ制覇1回の名将アール・ウィーバー監督だった。
 
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