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プロ野球

評価急上昇の楽天高卒ルーキー・黒川史陽。泰然自若のスラッガーが見せた1ミリ、1グラムのこだわり

田口元義

2020.02.27

好アピールを続ける黒川は、三木監督に「実戦でどれだけのことができるか見たい」と言わしめた。写真:金子拓弥(THE DIGEST写真部)

好アピールを続ける黒川は、三木監督に「実戦でどれだけのことができるか見たい」と言わしめた。写真:金子拓弥(THE DIGEST写真部)

 高卒ルーキーと思えないほど、ドラフト2位の黒川史陽は堂々としている。
 
 久米島での春季キャンプからそうだった。
 
 ぶら下がり取材で質問が一段落する。少しの沈黙が訪れると「すみません、浅村(栄斗)さんのランチ特打を見たいんで、もういいっすか?」と自ら終わりを切り出す。また、囲み取材で「先輩たちからどのようなアドバイスを?」と質問されれば、「いや、それは言えないです」とはっきりと断る。

 新人らしい初々しさも、百戦錬磨の番記者への気遣いなど、黒川にはない。
 智辯和歌山では1年夏から5季連続で甲子園に出場し、注目を浴び続けてきたのだ。取材慣れするのも当然なのだろうが、黒川はとにかく落ち着いている。
 
 それは、野球でも同じである。
 
 キャンプ序盤でのフリー打撃で、印象深いシーンがあった。
 その日、黒川は7本の柵越えを記録した。2016年、同じく高卒ルーキーながら一軍キャンプに帯同したドラフト1位のオコエ瑠偉は、初の屋外でのフリー打撃で柵越えがゼロだった。単純な比較ではあるが、黒川の本数が上々であることが理解できるはずだ。
 
 だが、当の本人は顔色ひとつ変えず、「バッティングは、まあまあです」と呟き、声のトーンを上げることなく自己評価した。

「100点満点だとしたら69.5点ですかね。まだ、技術があんまりないんで。茂木(栄五郎)さんのバッティングを見て、ヤバいと思いましたもん。これから、いろんな先輩を見て学んでいきたいし、プロのピッチャーと対戦していくなかで、失敗とかいろんな経験をするんで。その準備期間だと思っています」

 黒川は、自分の足元から目を離さない。
 おそらく、最初は失敗するだろう――そのような想定をしながら、緩やかながらも成長曲線を描くため、様々なアプローチで準備を進める。そのひとつにバットがある。
 
 高校時代から使い慣れている、長さ86センチ、重さ890グラムも用意しつつ、現在は86.6センチ、900グラムのバットを振る。

 選手にとってバットとは、体の一部のようなものだ。1ミリ、1グラムのズレが命取りとなる。そんな繊細な世界において、黒川は長さ6ミリ、重さを10グラムも変えた。大胆な決断ではあるが、これこそが黒川がプロで勝負するために導き出した数字なわけだ。

「このサイズのほうが、振り出しがいいんです。僕の場合、バットにボールができるだけ長く引っ付いているような感じで打ちたいんで、あんまり強く振らずに。ヘッドを利かせるイメージで振るようにしています」

 バットも自身の立ち位置も、冷静に見極めている泰然自若な高卒ルーキーは、日に日に首脳陣の評価を高めている。
 
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