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プロ野球

「僕が穴を埋める」故障者続出のソフトバンク。2年目右腕・泉圭輔がサバイバルを制して窮地を救う

上杉あずさ

2020.03.06

尾形や古谷らが脚光を浴びる中、その傍らでコツコツと準備をしてきた泉。今年は飛躍の年となるか?写真:滝川敏之

尾形や古谷らが脚光を浴びる中、その傍らでコツコツと準備をしてきた泉。今年は飛躍の年となるか?写真:滝川敏之

  ホークスの本拠地は福岡ヤフオクドームから福岡PayPayドームとして生まれ変わった。

  そのPayPayドーム初陣となった2月29日の阪神戦は4-5で敗戦、3月1日の2戦目は4-1で勝利した。いずれも若鷹の活躍が目立つ収穫ある戦いとなったが、その中で特に目立ったのがこの2試合に連投した今季2年目となる長身右腕・泉圭輔だ。

「対外試合が始まって一番良かった」という初戦は7回に登板し、無安打2奪三振無失点。0-5とリードを許す展開からテンポ良い投球で味方の反撃を呼び込んだ。2戦目はセーブシチュエーションの9回に登板。一死から二塁打を打たれるも、後続を捕ゴロ、空振り三振に仕留めてセーブをあげた。

 実戦を重ねるごとにマウンドさばきからも自信が感じられる。工藤公康監督は「三振をとれる球もあるし、真っすぐも強い。頑張って結果を残してくれているし、(開幕一軍)候補の一人」と評価している。この2試合で三振を奪った球はいずれも「落ちが大きかった」というツーシーム。持ち味の角度ある直球を軸にしながら、ツーシームでバットの空を切った。春季キャンプ中の対外試合から含めてチームトップの6試合に登板し、未だ無失点(3月4日現在)と堂々たるピッチングを続けている。

 泉の好投の背景には「キャンプ中は尾形と古谷に注目がいっていた」と語った言葉からもわかるように後輩たちの姿がある。

 支配下登録を目指す尾形崇斗が育成の星として注目を浴び、日本人最速160キロ左腕の古谷優人も覚醒を期待される。自身と共に初めてA組に抜てきされた2人は、今春キャンプで多くのメディアに取り上げられてきた。その姿を横目に、泉はコツコツと準備をしてきたのだった。
 
 そんな泉は、プロ入りまでは牛丼チェーン店「すき家」でアルバイトをしながら野球をしていた普通の大学生だった。全国大会などの大舞台とは無縁だっただけに、昨年4月16日のプロ初登板は「むちゃくちゃ緊張した」と振り返る。その6日後、東京ドームに4万3063人が詰めかけたタカガールデーでは6回無死1、2塁のピンチの場面に登板し、逆転を呼び込む投球で強心臓っぷりを見せるとプロ初勝利。大観衆の中での登板だけでなく初のお立ち台にも上がり、ルーキーイヤーから“プロ野球”の雰囲気を大いに感じた。

 泉はプロ1年目を頼もしくこう振り返っている。

「大学のリーグ戦も観客はポツポツだったし、甲子園出場経験もないし、今は日本一のホークスで真逆の世界。緊張はするけど、自分が1球投げるごとに反応があって、今は楽しいなと思えるようになりました。その歓声を聞きたくて抑えようという気持ちです」

 現在は無観客でオープン戦が行われているため、その思いをより強くしている。プロ野球選手としての喜びと使命感を感じながらマウンドに上がっているのだ。

 2年目となる今季、泉が好投を続けている秘訣は“フォームを戻した”ことにある。プロ入り前からホークスの先輩・武田翔太を参考にしたフォームで投げてきたが、進化を求めて武田似のフォームを自分なりにアレンジ。しかし、いろいろ試す中で「また武田さんに似せに行きました(笑)」と原点回帰した。本来の自分に立ち返りながらも、少し遠回りしたことで引き出しも増え、パワーアップに繋がったようだ。

 好投を続ける中でも、ポジションに確約などないホークス。“師匠”の武田をはじめ、昨季フル回転した同級生の甲斐野央など投手陣のケガや調整遅れが心配されているが、次から次に新戦力が台頭している。

 工藤監督は「右と言えば、泉の他に尾形や津森(宥紀)もみんな結果を残しているからね。でも、全員残せるわけではないのでね」と適性を見ながらふるいにかけると明言している。泉もまずはその争いに勝ち、開幕一軍を勝ち取りに行く。

「武田さんや甲斐野の穴は僕が埋めます」

 そう爽やかに語る右腕は、今季飛躍の予感を漂わせている。

取材・文●上杉あずさ(タレント)
【ソフトバンクキャンプPHOTO】目指すは4年連続日本一!2020年のスローガンは「S15(サァイコー!)」

【著者プロフィール】
ワタナベエンターテインメント所属。RKBラジオ「ホークス&スポーツ」パーソナリティやJ:COM九州「ガンガンホークス CHECK!GO!」リポーターとしてホークスを1軍から3軍まで取材。趣味はアマチュア野球観戦。草野球チーム「福岡ハードバンクポークス」の選手兼任監督を務める。
 

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